第45回「ロコモって知ってますか?」(平成24年8月19日)
皆さん、本当に暑い毎日ですが、お変わりありませんか? 7月の全国の熱中症搬送車数は昨年度を上回ったと聞いています。この調子でいくと、今月も記録を更新しそうです。
さて、今回は主にお年寄りの筋力低下が原因で引き起こされるロコモティブ症候群について、皆さんと一緒に勉強したいと思います。
1.健康寿命とは?
2000年にWHO(世界保健機関)が健康寿命の考え方を打ち出して以来、寿命を延ばすだけでなく、いかに健康に生活できる期間を延ばすかに関心が高まっています。
「健康寿命」とは、介護を受ける必要がなく、日常生活を健康的に送ることのできる期間のことで、厚生労働省は、全国22万世帯余りの健康状態などを調査した上で、初めてその結果を公表しました。
それによりますと、平成22年の我が国の健康寿命は平均で、男性が70.42歳、女性が73.62歳だったそうです。
これにより、平均寿命より男性は9年余り、女性は12年余り短いことが分かりました。
都道府県別で健康寿命が最も長かったのは、男性が愛知で71.74歳、女性が静岡で75.32歳と、いずれも東海地方でした。
ここで注意しなければいけないことは、食事や入浴など、身の周りのことを自立して行えることだけが、「健康」ではないということです。
『たとえ病気や障害を抱えていたとしても、自分の気持ちが前向きであり、その気持ちを自分で高めていけるのであれば、それは健康である』と考えられます。
つまり健康寿命とは、『自分が健康だと自覚していられる期間』という意味合いが最も大切といえるのです。
2.ロコモとは?
ロコモとは、ロコモティブ症候群(運動器症候群)のことで、2007年に日本整形外科学会によって考え出された言葉です。
「ロコモティブ」とは、本来、「機関車」や「運動」というような意味を持つ言葉ですが、医学的には、「骨」、「関節」、「筋肉」などの運動に関する働きを持つ身体の各部分を指した言葉です。
要するに、ロコモティブ症候群とは、骨や関節、筋肉などの運動に関する身体の各部分の働きが衰えて、自立した生活が送りづらくなり、介護が必要になったり、寝たきりの可能性が高まった状態のことを指します。いわゆる将来の要介護予備軍、または寝たきりになる予備軍です。
また、同じような病気として運動器不安定症があります。これは、「高齢化によりバランス能力および移動歩行能力の低下が生じ、閉じこもり、転倒リスクが高まった状態」と説明されている病気です。
ロコモが進むと、運動器不安定症となり、さらに進むと、要介護状態、あるいは寝たきり状態となっていきます。
介護が必要になった人のうち5人に1人は骨折や関節の痛みが引き金になっています。
骨折や関節の痛みは、骨粗しょう症、変形性膝関節症、変形性腰椎症、脊柱管狭窄症などの病気を抱えた人に多く見られます。
【東洋医学コーナー】
東洋医学では、筋肉のうち、柔らかいふっくらした部分を「肌肉(きにく)」と、また、アキレス腱のようにすじばった部分を「筋」と呼んでいます。
肌肉は、脾の臓によって、また筋は肝の臓によって栄養されていると考えています。
また骨は、腎の臓によって栄養されていると考えています。
これらのように、身体の運動に関する部分は、五臓(肝・心・脾・肺・腎)の中の一つと深い関わりを持っていると考えているのです。
3.ロコモの診断 ~ 7つのロコチェック
バランス能力や筋力の低下によって、自分が転びやすい身体になっていないかどうかをチェックしてみましょう。
以下の7つの項目のうち一つでも当てはまればロコモが疑われます。
(以下は、日本臨床整形外科学会が2009年に発表したチェック項目です。)
① 片脚立ちで靴下がはけない
② 家の中でつまずいたり滑ったりする
③ 階段を上るのに手すりが必要である
④ 横断歩道を青信号で渡りきれない
⑤ 15分くらい続けて歩けない
⑥ 2㎏(1リットルの牛乳パック2個)程度の買い物をして持ち帰るのが困難である
⑦ 家の中のやや重い仕事(掃除機の使用や布団の上げ下ろしなど)が困難である
上記の中で、心当たりの項目が一つでもあれば、次の体操を、是非行ってみてください。
4.「ダイナミックフラミンゴ療法」を毎日やってりましょう!
皆さん、何も捕まらずに、目を開けた状態で片脚立ちが何秒間できますか?
片脚立ちが長い時間できるということは、それだけ下半身を中心とする筋力や、身体のバランスを保つ深い部分の筋力などが維持できている証拠だと言えます。
5年前の新聞記事によると、75歳以上で、20秒以上の片脚立ちができる人は、男性38.9%、女性21.2%だったそうです。
研究データから、片脚立ちが長くできる人ほど、転倒や骨折をしにくいことが分かっており、片脚立ちを続けて訓練していくことで、骨粗しょう症の予防にもつながるそうです。
昭和大学整形外科の阪本桂造教授は、1分間の開眼片脚立ちを「ダイナミックフラミンゴ療法」と名づけ、これを1日3回行うよう長年、患者に指導されてきています。
「片脚立ちは、場所も必要としない上、実に短時間で骨の形成を促すのに充分な運動効果が得られると言われています。
ふらつく人は、何かに捕まった状態でも結構ですので、片脚立ちを左右1分ずつ1日3回行ってみてください。
それだけで、なんと足の骨には53分歩いたのと同じくらいの負荷がかかるそうですよ。
これは、骨粗しょう症や転倒による骨折防止に、大変適した運動だ」と阪本教授は話されています。
【ダイナミックフラミンゴ療法の効果】
① 骨密度の上昇
1日、左右1分ずつの片脚立ちを3回継続した人の骨密度を測定したところ、3ヶ月で6割以上の人で太ももの付け根の骨密度が上昇したそうです。
このことは、たとえ転倒したとしても、骨折しにくくなっていることを意味しています。
② バランス能力の向上
40~80歳代の女性約100人を対象に、6ヶ月にわたって左右1分ずつ1日3回の片脚立ちを行った組と、行わなかった組とを比較しました(両組の平均年齢はほぼ同じ)。
6ヶ月後、片脚立ちを継続していた組は、平均65秒できたのに対し、行わなかった組は34秒にとどまったそうです。これは、ダイナミックフラミンゴ療法を行うことで、バランス能力が高まったことを意味しています。
③ 転倒回数の減少
6ヶ月間に転倒した回数を比較してみたところ、片脚立ちを行わなかった組の方が、行った方に比べて3倍以上も多かったそうです。
④ 骨以外に及ぼす効果
足の付け根の骨を鍛える「ダイナミックフラミンゴ療法」と名づけられた、この実に簡単な方法で、骨だけでなく、股(こ)関節や腰や、背中周辺の筋肉も鍛えられます。そのため、股関節痛や、背中や腰の痛みが改善したとの声も聞かれると報告されています。
5.まとめ
現代生活は同じ姿勢の繰り返しです。使う筋肉が限られているため、使わない筋肉から先に早く老化します。
筋肉量や筋力は、20歳の時を100とすると、一般に80歳で半分以下になってしまうと言われています。それどころか、30になってしまう人さえいます。年をとって100を保つことは無理ですが、80歳で50になるのを70にすることはできます。
50を70に近づけるためには、ダイナミックフラミンゴ療法だけでなく、1週間に3日程度で結構ですので、スクワット体操も加えていってください。それにより、さらに下半身の安定感が増していきます。回数は、1日10回程度でいいですよ。スピードは4つ数えながら腰を下げ、4つ数えながら上げるような感じです。
このスクワット体操は、女優の森光子さん(92歳)や、黒柳徹子さん(78歳)たちがやっているので有名ですよね。
皆さん、明日からと言わず、今日からこれらの2つの体操でロコモを追放しましょうね。
夏場の熱中症対策で大切なのは水分補給です。朝昼晩の食事時に1杯ずつ飲む他に、朝起きてすぐ1杯、10時に1杯、3時に1杯、そして寝る前に1杯ずつは飲むようにしましょう。
また、10時と3時には、梅干しか漬け物を一緒に食べるようにすると、塩分補給にもつながります。
それでは次回まで、お元気でお過ごしくださいね。