第15回 梅雨と坐骨神経痛 (H21.5.24)

一年で一番憂うつな季節、それが梅雨です。
そんな梅雨がもうすぐやってきます。
今回は、そんな梅雨に起こりやすい神経痛、中でも坐骨神経痛についてお話ししたいと思います。

 

1.坐骨神経痛が好む季節、それが梅雨!
昨年、東海地方は6月3日に梅雨入りを迎えました。
ということは、今年の梅雨入りはあと10日前後ということになるのでしょうか。
梅雨入りすると、湿度がどんどん上昇します。
それと同時に、身体が重だるくなり、冷たい飲み物が欲しくなります。
また、扇風機やエアコンのスイッチをつける機会も増えてきます。
またじっとりとした汗が皮膚を覆い、気分も憂うつになり、充分な睡眠も取れなくなってきます。
このような状態になると、いろいろな症状が身体のあちこちに現れてきます。
その1つが坐骨神経痛です。

【豆知識】
坐骨神経は、身体の中で最も長く(およそ1m)、そして太い(鉛筆の太さくらい)神経だと言われています。
その走り方は、骨盤の前から起こり、おしりの下あたりまで走って皮膚表面近くに現れます。
そして、そのまま太ももの後ろ中央を下行し、中程で2本に分かれます。
さらに枝分かれをしながら膝の下の前後や外側を下って指先の方に向かっておりていきます。

 

2.坐骨神経痛を引き起こす原因は?
① 20~30歳代の坐骨神経痛
20~30歳代の比較的若い人が訴える坐骨神経痛の多くは、
腰椎椎間板ヘルニアや梨状筋症候群などがその原因だと言われています。

② 50~60歳代以降の坐骨神経痛
50~60歳代の初老期以降に見られる坐骨神経痛の原因の多くは腰部脊柱管狭窄症や
変形性腰椎症、そして糖尿病などです。
最初の2つは、年齢を重ねることで背骨がもろくなったり、椎間板の水分が減って薄くなったりした結果、
背骨が変形したり弯曲したりすることで起こるものです。
お年寄りの背中が丸くなっているのも、その1つです。
糖尿病が原因となる坐骨神経痛は、左右の足に痛みが現れるというのが特徴です。

③ 筋力低下や冷え、そして水分の取り過ぎから起こる坐骨神経痛
50歳代以降になると、身体の体温を作り出している筋肉、特に下半身の筋肉の量が減ってきます。
すると、身体の温度が低体温に傾いていき、その結果、神経が寒さに敏感に影響を受けるようになっていきます。
また、梅雨時に、水分を取り過ぎると、体内に必要以上の水分が蓄積します。
そしてエアコンなどで身体を冷やすと、必要以上に身体が冷やされ、
神経を取り巻く筋肉の緊張も加わって、神経痛を引き起こすのです。

【東洋医学コーナー】
東洋医学では、手足やその関節の痛み・しびれをまとめて痺証(ひしょう)と呼んでいます。
神経痛はこの痺証に含まれます。痺証の中でも、湿邪の影響を受けるものを湿痺(しつひ)と呼びます。
梅雨時に現れる「邪気」のことを「湿邪」と以前学習しましたが、もう一度、ここで復習したいと思います。

【湿邪の特徴】

  1. 身体や手足が重だるい。
  2. 症状が下半身に集中する。例えば、膝や足が重い、膝や足首がむくむなど。
  3. 症状が普段より改善しにくい。
  4. 雨の日や湿度が高い日に症状が悪化する。

 

3.坐骨神経痛を予防するには?
ここでは、主に坐骨神経痛を引き起こす誘因を取り除く方法について考えていきたいと思います。

① 足腰の筋肉を鍛える。
全身の筋肉量は若い人で体重のおよそ40%位だと言われています。
その筋肉のおよそ7割が下半身に集まっています。
50歳代を越えてくると、その筋肉量が徐々に少なくなってきます。
体温を作り出す筋肉が少なくなるということは、下半身から冷えを訴えることになるのです。
この対策としては、ウォーキングも有効ですが、それよりも下半身を中心とした筋力トレーニングがさらに有効です。
筋力トレーニングを行うと、筋肉量が必ず増えてきます。

② 足の後ろの筋肉をストレッチして柔軟な状態を保持する。
太ももの後ろや、ふくらはぎの筋肉を普段からストレッチして柔軟にしておくことが大切です。
この筋肉が緊張していることにより、坐骨神経が締め付けられて坐骨神経痛を引き起こす誘因となるのです。
このストレッチを行うと、不思議なことに腰の痛みが緩和されたり、
血圧が下がったり、疲れにくい身体に変わっていきますよ。
方法についてはあとで述べます。

③ 身体を扇風機やエアコンで必要以上に冷やさない。
暖かい空気は天井に、そして冷たい空気は床にたまりやすいとよく言われます。
エアコンの効いた部屋では、まず足の方から徐々に冷えてきます。
すると、足の後ろの筋肉が緊張してきます。
なので、下半身が冷えやすい人は、必ず靴下や腹巻きの着用を心がけましょう。

④ 水分の取り過ぎに注意する。
体内の水分は、身体を冷やす方向に傾きます。
それが、冷たい飲み物であればなおさらです。
ビールを飲み過ぎた翌日に、坐骨神経痛で苦しむ人の話をよく聞きます。
適度な水分を取ることは、脳梗塞や熱中症を予防する上で、とても大切なことだとよく言われます。
しかし、必要以上に取り過ぎると、必ずどこかにしわ寄せがきますので注意してください。
余談ですが、ビールは水ではありませんので、必ずビールとは別に水分を取るようにしてくださいね。

⑤ 半身浴で、たまった体内の水分をしっかり外に出す。
梅雨時は汗をかくことを嫌うようになります。
なので、体内にたまった余分な水分を積極的に外へ汗として出すために、半身浴が有効となります。
半身浴は、これから夏に向けて37~39℃の温度が適当です。
少なくとも20~30分は行い、しっかり汗を出すようにしてくださいね。

【下半身のストレッチ体操】
神経痛の発作が出ていない時に、以下のストレッチ体操を1日1回行ってください。
お風呂上がりに行うと効果的です。

① 太ももの後ろを伸ばす

a.両足を伸ばして座り、片方の膝を立てて外側に倒します。伸ばした足の下に入れてもかまいません。
b.そのまま、伸ばした足の方に身体をゆっくりと倒していきます。
c.少し痛みが出たところで30秒ほど止めてがんばります。
d.これを左右1回ずつ行います。

② ふくらはぎを伸ばす

a.足を前後に大きく開いて立ちます。
b.前の膝を曲げ、後ろの膝は伸ばします。
c.後ろの足のかかとを床から上げないようにしながら、身体を前にゆっっくりと倒していきます。
d.後ろの足のアキレス腱が少し痛みを感じるところで1分程度止めてがんばります。
e.これを左右1回ずつ行います。

 

4.坐骨神経痛チェックリスト
次に挙げる場所に重だるい痛みや電気が走るような鋭い痛みがある時は、坐骨神経痛の可能性があります。

  1. おしりや腰
  2. 太ももの後ろ
  3. 膝の下で主に後ろ側(ふくらはぎ)
  4. 膝の下で主に外側
  5. 膝の下で主に前側
  6. 足のくるぶし周辺

 

5.まとめ
坐骨神経痛を起こさないためには、普段の生活の中で生活習慣を見直し、
悪い習慣を正していくことが大切です。

  1. 規則正しい生活を送り、「十分な睡眠時間」をとりましょう。
  2. 水分の取り過ぎ(特に冷たい飲み物)、脂っこいものや甘いものの取り過ぎ、
    お酒の飲み過ぎなどに気をつけましょう。
  3. 下半身のストレッチや筋力トレーニングを心がけましょう。
  4. 扇風機やエアコンなどで身体を冷やし過ぎないように、気をつけましょう。
    冷え性の人は、靴下や腹巻きの着用を!
  5. 精神的に、イライラしないように気をつけましょう。
    イライラした時は、コップ1杯の水を飲むとスッキリしますのでお試しください。
  6. 半身浴をしながら、しっかり汗をかきましょう。

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