第17回 熱中症にご用心 (H21.7.19)
梅雨もようやく明け、いよいよこれから猛暑で悩まされる夏がやってきます。
体力の弱い人やお年寄りは、特にこの暑さには気をつけなければなりません。
今回は、そんな暑さトラブルの1つである「熱中症」について、
みなさんと一緒に勉強していきたいと思います。
1.熱中症って何だろう?
私たちの体は、血管を拡張させて体の外に体内の熱を放散させたり、
かいた汗が蒸発することで、体の表面の熱を放散させたりして、
体温の急激な上昇を防いでいます。
しかし、気温が高いと体内の熱はうまく放散されず、また湿度が高いと汗は蒸発しません。
熱中症は、周りの温度に体が対応することができず、
体内の水分や塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れ、
体温の調節機能がうまく働かないなどが原因で起こります。
毎年7月から8月にかけて最も多く発生し、症状が重くなると命に危険が及びます。
熱中症は、異常に気温や湿度が高い日が続いた場合や、
風が弱い、日差しが強いなどの環境で起こりやすくなります。
特に、体調不良の人、高齢者、小児、肥満の人、
ふだんから運動をしていない人などは熱中症になりやすいので注意が必要です。
【豆知識】
体内の水分欠乏率とその代表的な脱水症状を以下に記します。
体内の水の量は体重の60%程度だと言われています。
1%:喉の渇きなど。
2%:強い渇き、ぼんやりする、重苦しい、食欲減退、血液濃縮など。
4%:動きが鈍い、皮膚が赤くなる、いらいらする、吐き気、感情の不安定など。
6%:手足のふるえ、頭痛、体温上昇、脈拍や呼吸の上昇など。
8%:呼吸困難、言語不明瞭、疲労増加、精神錯乱など。
20%以上:死亡。
2.熱中症を起こす原因は?
熱中症が起こる仕組みは、大きく2種類に分けられます。
(1) 外から入ってくる熱が主な原因で起こる熱中症
夏に気温が異常に上がって、それが何日も続く「熱波」の時期によく起こり、
特に高齢者や乳幼児に多く発生します。
心臓病や腎臓病、糖尿病などの病気がある人は頻度が多くなります。
屋外の駐車場に止めた車の中で乳幼児が起こしたり、
一人暮らしの高齢者が起こすケースなども、これにあたります。
(2) 体内で発生する熱がおもな原因で起こる熱中症
夏のスポーツや、屋外での労働など、高温環境での運動時・作業時に多く起こります。
健康な人でも、若い人でも、暑い中で無理をすると発生します。
大量の発汗をともない、臓器障害を起こすことも多いのが特徴です。
梅雨明けは、特に熱中症に気をつけましょう。
熱中症は、7月下旬から8月上旬の梅雨明け直後に特に多く、
また梅雨の晴れ間で急に暑くなった時などにも起こります。
特に熱中症による死亡災害は、7月が最も多くなっています。
これは、体が暑さになれていないため、熱中症にかかりやすいだけでなく、
かかった時のダメージが大きくなるからだと考えられます。
【東洋医学コーナー】
東洋医学では、熱中症のことを「熱邪」の侵襲、
つまり体の外で発生した熱によって攻撃される場合を指しています。
熱邪とは、一般に夏場の暑い時期に発生する邪気のことですが、
冬場でも熱い環境の中で働く場合にも発生します。
熱邪の影響を受けるということは、体内の正気(元気)が不足しているか、
外から侵入する熱邪の勢いが盛んであるかのどちらかです。
充実した正気は、バランスの取れた食事(水分摂取を含む)、
充分な睡眠、適度な運動によって得られます。
3.熱中症を予防するためには?
- 運動前は胃腸などの負担にならない程度にできるだけ多くの水分を取りましょう。
- 発汗によって失った水分と塩分の補給をこまめに行いましょう。
スポーツドリンクなど、塩分と糖分を飲みやすく配合した飲み物の利用がおすすめです。 - 睡眠を充分に取りましょう。
- 充分に休憩を取りながら作業しましょう。
- 体感温度を下げましょう。
体感温度を下げる方法として、日射を防ぐ、通風を確保する、
扇風機の風を作業場所へ向ける、スポット冷房する、
作業服の内部へ送風する(そのような機能を持った作業服を着用)、
蓄冷剤を利用する、水の気化熱を利用して体温を下げるなどの工夫を行いましょう。 - 作業は複数で行いましょう。
一人で作業すると発見が遅れることになりかねませんので、複数で作業しましょう。 - 部屋の冷やしすぎに気をつけましょう。
冷房が効いた部屋から、暑い町中に出た時、急に気分が悪くなり、息苦しさやめまいを感じることがあります。
人の体は寒暖に順応できるのですが、寒さに対しては神経の反応を素早く調節できるのに対し、
暑さに対しては血液や脳の温度を上昇させるまで待たなければならず、適応が少し遅れるのです。 - 入浴はぬるめで短時間にしましょう。熱い湯に長時間入ると、
脱水を起こす可能性があり、また体温が高めになる傾向があります。
入浴の前後には、水分補給を心がけましょう。
4.熱中症にかかった場合の応急処置〈重要な4つのポイント〉
- 「給水」
普通のお茶や水ではなく、薬局で販売している「経口補水塩」またはスポーツドリンクなどを飲ませましょう。
ただし、冷たいものを大量に飲ませると胃痙攣が起きることがあるので注意が必要です。 - 「体を冷やす」
霧吹きで全身に水を浴びせて、気化熱によって冷やしましょう。
霧吹きがない時は、口に水を含んで吹きかけましょう。
その時の水は冷たくなくていいです。
一気に水をかけるとショックが大きいので、冷たい缶ジュースや氷枕などを腋の下、
頚の前の両側、股などの動脈が集中する部分に当てて冷やすのもいいでしょう。 - 「衣服をゆるめる」
涼しい場所、例えば木陰やクーラーの効いたところで衣服を緩めましょう。
近くにそのような場所がないときは、うちわなどで早急に体を冷やしましょう。 - 「救急車を呼ぶ」
躊躇せずに、救急車を呼び病院へ連れていきましょう。
移動させるのに人手が必要と思えば、大声で助けを呼びましょう。
汗をかいていないとしても、体温が高くなくても熱中症の可能性はあります。
脱水していれば、汗はかくことができません。
体温調整ができなくなっているためか、高温多湿の体育館内での運動中などに
寒気を訴える場合があり、そういった時は熱中症の兆候を疑いましょう。
自覚症状で熱中症だと感じることはまずありません。
自分で大丈夫だと思っても「おかしい」と思った時にはもう遅い可能性があるので、上記を参考に充分注意しましょう。
5.まとめ
熱中症にならないためには、普段の生活の中で生活習慣を見直し、悪い習慣を正していくことが大切です。
- 規則正しい生活を送り、「充分な睡眠時間」をとりましょう。
- こまめに水分を取りましょう。利尿作用のある飲み物、
つまりカフェイン飲料やアルコールの飲み過ぎなどは要注意です。 - 扇風機やエアコンなどで体を冷やし過ぎないように、気をつけましょう。
冷え性の人は、靴下や腹巻きの着用を! - 精神的にイライラしないように気をつけましょう。
イライラしている時は、水分の欠乏を意味しますので給水を心がけましょう。 - 日頃から梅干しや漬け物を食べて、塩分補給を心がけましょう。