第20回 ノロウイルスにご用心 (H21.11.22)

11月に入り、寒さが身にしむ季節となりましたが、みなさんお変わりありませんか?
新型インフルエンザが大流行している最中ですが、この時期は1年を通じて食中毒を引き起こす
有名な「ノロウイルス」が流行する時期でもあります。
そんなノロウイルスについて、今回みなさんと一緒に勉強したいと思います。

 

1.ノロウイルスって何だろう?
ノロウイルスによる食中毒は、一年を通して発生していますが、
特に冬季に流行し、12月から1月にピークを迎えます。
ノロウイルスは、手指や食品などに付着し、それが口から入って感染します。
そして、人の腸管で増殖し、嘔吐(おうと)、下痢、腹痛などの症状を引き起こします。
健康な方は軽症で回復しますが、子どもやお年寄りなどでは重症化したり、
嘔吐物を誤って気道に詰まらせて死亡することがあります。
平成18年の全国における食中毒発生状況によると、ノロウイルスによる食中毒患者数は、
総患者数39,026名のうち27,616名(71.0%)となっており、食中毒患者数の第1位となっています。

【東洋医学コーナー】
東洋医学では、前回お話しした新型インフルエンザウイルスと同様、
ノロウイルスも癘気(れいき)と呼んでいます。
癘気は、暑さや冷え、そして湿り気などと同じく、身体の外から体内に侵入してくる邪気の一つです。
元気が充実していれば、そんな病にかからないというのが東洋医学の考え方です。
でも、その邪気の勢いが非常に強かったり、自分の元気が低下していると病にかかってしまいます。
バランスのとれた栄養(水穀の気)をしっかり取り、
そして新鮮できれいな空気中の酸素(天空の気)を取り込むようなライフスタイルを心がけましょう。
もちろん、充分な睡眠と適度な運動も忘れずに!

 

2.原因となる食品、そしてその症状は?
食品から直接ウイルスを検出することは難しく、
食中毒事例のうちでも約7割では原因食品が特定できていません。
考えられる原因としては、ノロウイルスに汚染されたカキやアサリ、シジミなどの二枚貝があります。
二枚貝は大量の海水を取り込み、プランクトンなどのエサを体内に残し、出水管から排水していますが、
海水中に投棄された糞便中のノロウイルスも同様のメカニズムで取り込まれ体内で濃縮されています。
なお、ノロウイルスに汚染された二枚貝による食中毒は、生や加熱不足のもので発生しており、
充分に加熱(85℃1分以上)すれば、食べても問題ありません。
潜伏期間(感染してから症状が現れるまでの期間)は24~48時間で、
主症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛であり、発熱は軽度です。
その他の症状として、頭痛・筋痛・咽頭痛・倦怠感などが現れることもあります。
通常、これら症状が1~2日続いた後、治癒し、後遺症もありません。
また、感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状の場合もあります。
冬場の胃腸風邪はこの一種ではないかと言われています。

 

3.感染を予防するためにはどうすればいいの?

(1) 手洗い
最も重要で、有効な予防方法は手洗いです。
トイレの後、食事の前、調理の前、おむつ交換の後、嘔吐物や下痢便の処理の後などでは、
流水・石鹸による厳重な手洗いが必要です。また、嘔吐・下痢症状のある方とのタオルの共用は避けてください。

(2) 嘔吐物や下痢便の処理
ノロウイルス感染症の場合、その嘔吐物や下痢便には、ノロウイルスが大量に含まれています。
そして、わずかな量のウイルスが体内に入っただけで、容易に感染しますので、
その処理については充分注意が必要です。

① 発見
ノロウイルスの流行期に嘔吐物や下痢便を発見した場合、できる限り子どもや高齢者の方を遠ざけてください。
その場所がトイレであれば、処理が終わるまでは使用しないようにしてください。
処理の際にウイルスを含んだ飛沫が舞い上がりますので、処理をする人以外は少なくとも3mは離れてください。

② 処理
嘔吐物及び下痢便の処理は、ノロウイルスにある程度抵抗力のある大人の方が行ってください。
子どもや高齢者の方は、できるだけ処理をしないようにしてください。
放置しておけば感染が拡がり、速やかに処理する必要があります。
処理をする方の防御のため、マスクや丈夫な手袋をしっかりと着用し、
雑巾・タオルなどで嘔吐物・下痢便をしっかりと拭き取ってください。
拭き取った雑巾・タオルはビニール袋に入れて密封し、破棄してください。
(破棄しない場合は、水洗い後しっかりと消毒してください)
拭き取りの際に飛沫が発生しますので、無防備な方は絶対に近づけないでください。
その後、うすめた塩素系消毒剤100~1,000ppm(または、ハイターなどの家庭用塩素系漂白剤では
50倍程度にうすめたもの)で、嘔吐物や下痢便のあった箇所を中心に広めに消毒を行ってください。
嘔吐物、下痢便の付着した衣類は水洗いした後、塩素系漂白剤で消毒してください。
もちろん、衣類を水洗いした場所も消毒が必要です。
感染者の利用したトイレは消毒し、トイレ専用の履物を用意しましょう。
※ 嘔吐物や下痢便の付着した衣類やタオルなどを複数の人が使用する水道で
洗浄することはできるだけ控えてください。
もし、水道で洗浄した場合は、その洗浄場所を必ず塩素系消毒剤で消毒しましょう。
便や嘔吐物が乾燥して、細かな塵と一緒に舞い上がり、
その塵と一緒にウイルスを体内に取り込んだ場合も感染しますので注意が必要です。

(3) 家庭での調理について
貝類は中心温度が85℃、1分以上で充分に加熱して食べてください。
また、貝類を調理する際に使用した包丁やまな板は、使用後は熱湯やアルコールで消毒してください。

(4) 症状がおさまった後
症状がおさまった後でも、数日から一週間以上ウイルスは便などから排出されますので、
しばらくは注意が必要です。

 

4.まとめ
ノロウイルスは、わずか数10個~100個程度体内に取り込むだけで感染し、食中毒を引き起こすと言われています。
それに対して、食中毒を引き起こした患者さんの嘔吐物の中には、
約1万~10万個/g、糞便の中には約10億個/gのノロウイルスが含まれていると言われています。
このようにノロウイルスに汚染された食品や器具、感染した人などを感染源として、
容易に感染が広がることが予測できます。
普段の生活の中で、私たちが特に気をつけることは次の3つです。

  1. 手洗いやうがいを頻繁に行うこと。
  2. 二枚貝などの調理において、加熱を充分(85℃、1分以上)に行うこと。
  3. 調理場や調理器具でのウイルス除去をしっかりと行うこと。

これから寒さが益々厳しくなります。くれぐれも、自分の周りから冷たいものを遠ざけ、
温かいものの飲食や身体の保温に努めましょう。

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