第30回 悪者扱いされるコレステロール (H22.12.26)

インフルエンザの予防接種を先日受けてきました。今回のワクチンは、季節性インフルエンザと新型インフルエンザの両方に効果があるそうです。一度受けておくと、2週間で免疫ができ、その効果が半年近くも持続するそうです。受けていない方は、早めに受けることをおすすめします。
さて、今回は、世間一般で悪者扱いされている「コレステロール」について、皆さんと一緒に勉強したいと思います。

 

1.コレステロールって何だろう?
コレステロールは、よく悪者の代名詞のように言われていますが、実は体内の細胞を作ったり、ホルモンの原料となったり、栄養素の消化吸収に関わるなど、人の身体には欠かせない成分の1つなんです。
体内のコレステロールは、肝臓を主とする臓器で合成されたものと、食事の際に卵黄や肝、及び肉類など動物性食品から取り込まれたものが合わさってできています。
その割合は、体内で合成されたものが約70~80%で、食品から取り込まれたものが約20~30%と言われています。
身体にとって、必要な分だけ吸収されると同時に、余分なものは肝臓で処理されて、体外に排出されます。
つまり、身体の中でバランスが取られているんです。
しかし、エネルギーの摂取過剰、食事からのコレステロールの摂り過ぎ、運動不足、喫煙など、日常的に生活習慣が乱れてくると、肝臓の機能が低下し、コレステロール生成のバランスが崩れ、血液中のコレステロールの量が徐々に高くなっていきます。

【東洋医学コーナー】
東洋医学では、肥満の原因につながる暴飲暴食や偏った食事などのことを「飲食」と呼んでいます。
「飲食」は、東洋医学でいうところの五臓の1つである「脾」の働き、つまり消化・吸収の働きや体内におけるエネルギー代謝の働きを妨げたりします。
また、身体を冷やしたり、精神的なストレスなどによっても「脾」の働きが低下すると言われています。

 

2.コレステロールの種類にはどんな物があるの?
人の身体を流れるコレステロールには、「LDL」が運ぶものと「HDL」が運ぶものの2つがあります。

① LDLが運ぶコレステロール
肝臓や腸で作られたコレステロールは、LDLと呼ばれる運搬車によって血液に溶け込み、体全身の隅々の細胞まで運ばれていきます。
しかし、使われない余分のコレステロールは途中の血管や抹消の組織に置いてきます。
つまり、この過剰に増えたコレステロールが悪玉となり、血管壁に沈着して動脈硬化の原因となっていくのです。

② HDL(善玉)が運ぶコレステロール
一方、HDLと呼ばれる運搬車は、LDLが血管や、抹消の組織に置いてきたコレステロールを集めて、再び肝臓へ持ち帰る働きをします。これが善玉と呼ばれている理由です。HDLは動脈硬化の予防に大きく関わっているのです。
コレステロールの正常な状態とは、LDLとHDLのバランスが取れている状態です。

★ LDLが過剰な状態 → 悪玉に変化 → 動脈硬化が進む → 心筋梗塞や脳梗塞の危険度アップ

 

3.脂質異常症って何だろう?
生活習慣病で問題になっている動脈硬化ですが、この原因につながる病気の1つが脂質異常症です。
脂質異常症とは、血液中のLDLが多過ぎて悪玉に変化したり、善玉であるHDLが少なくなってくる病気です。また、中性脂肪が多過ぎても起こります。
一般に、脂質異常症は次の3つの値のうち、1つでも該当するものがあれば対象となります。

☆ LDLの値が140㎎/dl以上
☆ HDLの値が40㎎/dl未満
☆ 中性脂肪の値が150㎎/dl以上

コレステロールや中性脂肪が増える原因は、飲酒、過食、甘いものや糖質・脂肪の多い食生活(果物も要注意!)、運動不足、肥満、喫煙などがあります。
中性脂肪の量が多くなると、善玉を減少させたり、悪玉を酸化させ小型化し、血管壁に入りやすい超悪玉にしたりします。

4.脂質異常症にならないために
脂質異常症の予防は、運動と食事に気をつけるのが基本です。喫煙も脂質異常症の原因になります。

(1) 運動
運動すると中性脂肪が減少し、善玉が増加します。
笑顔でおしゃべりしながら、うっすらと汗が出る程度の有酸素運動、例えば少し速歩きのウォーキングや、プールでの水中歩行などが効果的です。

(2) 食事

  1. 脂肪のバランスを考えよう!
    「植物性2:動物性1」の割合にしましょう。
    肉の脂身やバターは、摂り過ぎないようにしましょう。
    植物性脂肪(ゴマ油やオリーブ油など)や、青背の魚(イワシやサバなど)に含まれる不飽和脂肪酸は悪玉を低下させる作用があります。
  2. 食物繊維を充分に摂ろう!
    野菜類、穀類、豆類、いも、キノコ(シイタケ)、海草、こんにゃくなどに多く含まれる食物繊維は腸管内コレステロールの排泄を促進させます。
  3. ゆっくりよくかんで腹八分目にしよう!
    エネルギーの摂り過ぎは体内の脂肪を増やして、コレステロール合成を高めます。
  4. 3食を規則正しく毎日摂ろう!
    一日2食は、肥満を招きます。
  5. 糖分やアルコールは控えめにしよう!
    糖分の摂り過ぎやアルコールの飲み過ぎは、中性脂肪を増やします。
  6. タマネギとニンニクをもっと食べよう(時々生で)!
  7. 料理に唐辛子を使おう!
    ただし、前立腺に問題のある人は症状を悪化させる恐れがあるので、注意が必要です。
  8. コーヒー、紅茶、コーラなどのカフェイン飲料をよく飲む人は、それらを減らし、緑茶にしよう!
    緑茶にもカフェインは含まれていますが、コレステロールを下げる成分を含んでいます。
  9. 動脈を保護するために、ビタミンCおよびビタミンEの栄養補助食品を利用しよう!

(3) 喫煙
喫煙は善玉を酸化させ、動脈硬化を進めます。
本数が多くなると、善玉を減らして、悪玉を変性させ、血管や組織への吸収を促します。要するに、動脈硬化が進むわけです。

 

5.脂質異常症のチェックリスト
脂質異常症は自覚症状がほとんどないため、気がつきにくいものです。
下の項目により、脂質異常の危険度をチェックし、あなたの生活習慣を振り返ってみましょう。
当てはまる項目を数えてみてください。

  1. タバコを吸っている。
  2. 肥満である。
  3. 血圧が高い。
  4. 魚よりお肉が好き。
  5. 甘いものが好き。
  6. 運動不足である。
  7. 睡眠不足である。
  8. 野菜やきのこ、海藻類はあまり食べない。
  9. お酒は毎日飲んでいる。

〈判定結果〉

a.2個以下 
現時点では、生活習慣上の問題は少ないようです。

b.3~5個以下
生活習慣を見直す必要がありそうです。
脂質異常にならないように、規則正しい食生活を心がけ、できるだけ体を動かすようにしましょう。

c.6個以上
血液がドロドロになっている可能性があります。
健康診断や検査を受け、医師や保健師のアドバイスを受けましょう。

 

6.まとめ
脂質異常症にならないためには、普段の生活の中で生活習慣を見直し、悪い習慣を正していくことが大切です。

  1. 運動不足にならないように、毎日少しでも歩くように心がけましょう。
  2. 肥満を予防し、標準体重の維持に心がけましょう。
  3. 脂っこいものや甘いものを食べ過ぎないように、気をつけましょう。外食をする際は、焼肉定食より塩サバ定食に!
  4. 禁煙を心がけ、アルコールやジュースなどを飲み過ぎないように気をつけましょう。
  5. 身体を冷やさないように、気をつけましょう。
  6. 精神的に、イライラしないように気をつけましょう。イライラした時は、コップ1杯の水を飲むとスッキリしますのでお試しください。

健康講座を始めて3年が終わろうとしています。なんとか皆さんのおかげで、ここまで続けて来れました。本当にありがとうございました。
来年からも皆さんの健康に少しでも役立つ情報を提供していければと考えていますので、どうかよろしくお願いします。
来年が皆さんにとってよいお年でありますよう、お祈りしています。

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