第35回 鉄分足りてますか? (h23.6.26)
6月に入り、寒いような蒸し暑いような天気が続いていますが、皆さんお変わりありませんか?
沖縄が、もうすでに梅雨明けしたという報道がありましたが、この調子だと東海地方の梅雨明けも例年より早くなるかもしれませんね。
さて、今回は血液中の鉄分について、皆さんと一緒に勉強したいと思います。
1.血液って何だろう?
血液は一見赤い液体のように見えますが、そうではありません。
血漿(けっしょう)と呼ばれる淡い黄色みがかった透明の液体の中に、無数の細胞(主に赤血球)が泳いでいる状態です。
この血漿の中には、様々な栄養素やホルモン、そして免疫物質などが溶け込んでいます。
赤血球の数は、1立方ミリメートル中400万から500万、それらが均等に混ざっているので赤い液体のように見えています。
この赤血球は、肺から取り込んだ酸素を全身の細胞に運ぶという重要な働きをしています。
赤血球の中には、ヘモグロビンと呼ばれる鉄を含む蛋白質が含まれています。このヘモグロビンが酸素と結合すると、血液は赤っぽくなり、酸素を放すと青っぽくなります。
血液に含まれる細胞には、他に白血球や血小板があります。
白血球の数は1立方ミリメートル中4,000~9,000で、主に身体を護る免疫機能、例えば風邪のウイルスや細菌と戦ったり、がん細胞を攻撃したりする働きがあります。
また、血小板の数は1立方ミリメートル中15万~40万で、血液凝固、つまり出血した血液を固まらせる働きをしています。
【東洋医学コーナー】
東洋医学では、血液のことを「血(けつ)」と呼んでいます。
水穀(食べ物)に含まれる水穀の気(栄養素)は、脾・胃(胃や腸のこと)から体内に取り込まれます。
そして、呼吸によって取り込まれた清気(酸素のこと)と結合して、血となり、全身を巡るのです。
この辺の考え方は、西洋医学の考え方と非常に似ていますね。
2.体内に含まれる鉄分は?
鉄は赤血球の原料であり、人間が生きていく上で、なくてはならないミネラルの1つです。
私たちの体内に存在する鉄分は、成人男性で体重1㎏当たりおよそ50㎎、女性ではおよそ35㎎あると言われ、体重60㎏の女性に換算すると、およそ2.1gの鉄を体内に持っている事になります。
鉄分のおよそ70%は赤血球のヘモグロビンに含まれて存在し、残りは、肝臓・脾臓・筋肉・皮膚などに存在します。
鉄分の多くを占める赤血球は、寿命がくると脾臓で破壊されますが、そのとき、ヘモグロビンに含まれていた鉄分のほとんどは再利用されていきます。
また、体外に汗や尿などで排泄される鉄分は1日わずか1㎎にすぎません。よって、私たちが1日に必要とする鉄分は、体外への排泄分1㎎でいいのです。
しかし、実際には摂取した鉄分の10%しか腸から吸収されませんので、食事に含まれる1日に必要な鉄分は10㎎でいいことになります。
ただし、女性の場合は生理による鉄分の損失などを考えると、女性は男性よりも多めに取らなければなりません。
以上のことから、1日に食事で摂取する鉄分の目安は、成人男性で10㎎、成人女性では12㎎となります。
3.鉄分が不足するとどうなるの?
体内の鉄分が不足すると、まず肝臓や脾臓に蓄えられている貯蔵鉄が減ってきます。
この時点では、貧血のない鉄欠乏の状態です。
さらに鉄分が減ってくると、ヘモグロビンがつくられなくなって貧血になります。これを鉄欠乏性貧血と言います。
女性の生理での出血や、胃潰瘍(かいよう)・大腸がんなどの病気で出血があると、大量の鉄分が失われ、これを補うのは困難となります。
このときには、肝臓や脾臓に蓄えられている鉄分が動員されますが、貯蔵鉄が不足すると、ヘモグロビンをつくるための鉄分が不足して貧血に陥ります。
【貧血を起こす主な原因】
- 胃腸からの吸収不良(ご高齢者や、胃切除手術を行った人など)
- 造血機能の不良(骨髄の病気など)
- 下血や出血(過多月経、胃潰瘍や大腸がん、そして大けがによる失血など)
- ダイエット(小食や偏食などの栄養不良からくる鉄分の不足)
- 菜食主義(肉や魚貝類に含まれるヘム鉄が導引されない)
- 他の病気による栄養障害
【貧血の主な症状】
貧血になると、疲れやすい・だるい・動悸・息切れ・頭痛・頭が重い・めまい・たちくらみ・便秘・下痢しやすい・食欲不振・足が重い・爪が割れやすい・爪が反り返るなどの症状が現れてきます。
もしも、これらの症状に心当たりがある方は、主治医の先生に相談してみてください。
4.食事で貧血を改善しよう!
食事に含まれる鉄分には、ヘム鉄と非ヘム鉄とがあります。
ヘム鉄は肉や魚貝類に多く含まれ、非ヘム鉄は大豆食品、緑黄色野菜、海草類などに多く含まれています。
一般に、腸から吸収されるヘム鉄は、食事中に含まれる鉄分全体の15~25%です。また、非ヘム鉄の場合は全体の2~5%とそれよりも吸収率が低いことがわかっています。
☆ ヘム鉄を含む主な食品
レバー・いわし・かつお・かき・あさりなど。
☆ 非ヘム鉄を含む主な食品
豆腐・納豆・ほうれん草・春菊・ひじきなど。
鉄分の上手な取り方をまとめると、次のようになります。
★ 緑茶やコーヒーに注意
緑茶やコーヒーのタンニンは、鉄分の吸収を妨げます。特に、鉄剤を服用する場合には、効果が下がってしまうので注意が必要です。
★ 果物でパワーアップ
果物や野菜などの植物性食品に含まれるビタミンCは、鉄の吸収率を良くします。非ヘム鉄を含む食品と一緒に取ることをおすすめします。
★ 動物性食品の鉄分をとる
鉄分は、ヘム鉄が多い肉や魚貝類などを取った方が、体内への吸収が高まります。魚は白身のものより、マグロやカツオなどの赤身のものの方が鉄分が豊富です。
★ ダイエットに注意
ダイエット(小食や偏食を含む)で全体の栄養素が摂取不足になると、当然のことですが鉄分も不足してしまいます。
以上の他に、ビタミンB12、葉酸、ビタミンB6などは造血作用を高める栄養素だと言われています。鉄分と一緒に取るようにしましょう。
○ ビタミンB12を多く含む食品
レバー・貝類・味付けのりなど。
○ 葉酸を多く含む食品
レバー・ウナギの肝・ほうれん草・枝豆・モロヘイヤ・ブロッコリー・焼きのりなど。
○ ビタミンB6を多く含む食品
レバー・マグロ・カツオ・納豆・ピスタチオ・唐辛子・バナナなど。
5.お茶に含まれるタンニンのよい点と悪い点
タンニンは、お茶に含まれる苦み成分です。近年、特にこの苦み成分の効果を含めて、多くの健康効果が確認されるようになり、専門家から注目を集めています。
例えば、摂取することで、その作用が内臓に影響を及ぼし、下痢の改善、整腸作用などが見られるようになります。
また、抗酸化作用やコレステロール抑制作用、血圧上昇抑制作用、抗菌作用、抗アレルギー作用など、現代病に有益な効能も多く見られます。
しかし、タンニンの豊富な効能の陰に、望まれない効果があることも事実です。
過剰な摂取は便秘を引き起こしますし、タンニンは身体に吸収される前に鉄分と結合して、鉄分の吸収を阻害します。
タンニン鉄の鉄分が全て吸収されないというわけではありません。通常なら問題ありませんが、貧血症状などに悩まされている人には困った問題となります。
一般に、100ml中に含まれるタンニンの量は、紅茶で100㎎、コーヒーや緑茶で70㎎と言われています。しかし、麦茶は10㎎です。
緑茶などのしぶいお茶やコーヒー、紅茶は食間に飲むようにし、食事時に飲むのは、タンニンの少ないお茶を飲むようにしましょう。
タンニンの少ないお茶には、麦茶・ほうじ茶・玄米茶・杜仲(とちゅう)茶・そば茶などがあります。
また、緑茶やウーロン茶、コーヒー、紅茶などにはタンニンだけでなく、カフェインが含まれていますので、夕食後に飲むと眠りのトラブルにつながる恐れがあります。
できれば、日中に飲むようにしましょう。
6.まとめ
昔から夏場に飲む機会が多くなる麦茶ですが、その健康効果についてまとめてみたいと思います。
- 夏場に体温を下げ、熱中症の予防につながる。
- カフェインが入っていないので、夜でも安心して飲める。
- タンニンが含まれていないため、鉄分の吸収の邪魔にはならない。
- 傷ついた胃粘膜を修復してくれる。
- がん・脳卒中・心筋梗塞などの原因につながる活性酸素を除去してくれる。
- 血液をさらさらにしてくれる。
- 香ばしいかおりで、心をリラックスさせてくれる。
以上のように、昔からよく飲まれている麦茶には、こんなに多くのすばらしい健康効果が隠されていたんです。
1つ注意しておいて欲しいことは、麦茶はいたみやすいお茶です。煮出した場合は、なるべく早めに飲みきってしまうことが大切です。
昨年の夏は、戦後最悪の猛暑と言われ、熱中症で倒れる人が多い夏でした。
今年の夏は、昨年ほどではないですが、例年よりも暑くなるといっています。
是非皆さんも、麦茶と一緒に鉄分をしっかり補給しながら、この暑い夏を乗り切ってくださいね。