第44回「湿布の効用」(平成24年7月29日)

~ 湿布の効用 ~
平成24年7月29日(日)

夏真っ盛りですね。皆さん、夏ばてなど、されてませんか?
私は、こんな暑い夏には、いつも「ウナギ」を食べて、夏ばてを解消しています。
さて、今回は手首をひねったり、捻挫など、ケガをしたときに使う湿布などについて、皆さんと一緒に勉強したいと思います。

1.湿布はなぜ効くの?
重い物を持って歩いたり、長い距離を歩いたりすると、半日後とか1日後には筋肉痛になることが多いと思います。
そんな時にお世話になることの多い湿布ですが、本当に筋肉痛を和らげたり、症状を軽くする効果があるのでしょうか?

(1) 湿布が効くしくみ
湿布が、炎症による筋肉の痛み(寝ちがえやぎっくり腰など)に効くのは、主に「アイシング(冷却)」による効果と、湿布に塗布されている「薬剤」による消炎・鎮痛効果のためだと言われています。
炎症とは、打ち身・骨折・捻挫(ねんざ)など、様々なケガによって引き起こされる身体の防御反応です。炎症には、発熱・痛み・腫れ・赤くなるといった症状に加え、動かすことができないなどの特徴があります。
まずは湿布の有効性について考えてみましょう。

① アイシングによる効果
いわゆる、急性の筋肉痛というのは一種の炎症反応と考えられ、特に捻挫や肉離れ直後の関節や筋肉の痛みについては、アイシングなどで冷やすことにより、ダメージを最小限に抑え、回復を早める効果があります。
使用に当たっては、必ず局所に熱感がある場合に限定されます。
ただし、足がつった時(こむら返りを起こした時)や神経痛などは、冷やすと症状が悪化しますので、筋肉が痛いからといって絶対にアイシングをしてはいけません。
☆★ ご家庭でも出来る、簡単なアイシングの方法 ★☆
足首をくじいたり、転んでどこかぶつけたりして腫れたときの応急処置として、誰でもできる簡単なアイシングの方法を紹介します。
アイシングをすることにより、痛みや腫れをやわらげて炎症の拡がりを抑えるので、回復を早める手助けにもなります。
一般に、炎症症状は2日から3日持続すると言われています。ですので、アイシングは長くとも3日までにやめなければなりません。さもないと、今度は冷えからくる痺れや痛みで悩まされる原因につながります。
炎症症状があるうちは、お風呂に入るのはやめましょう。温めることにより、症状が悪化します。
炎症症状がなくなったら、今度は痛めた場所を温めます。そうすることにより、治るのが速くなるわけです。
では、アイシングの方法を以下に説明します。
a.ビニールの袋に氷と水をいれて空気を抜いて縛ります。これを、アイスパックと言います。
ここでのポイントは、必ず氷に水を足して0℃にすることです。氷がすぐに溶けてしまわないように水の量は、あまり多くならないようにしてください。
氷は0℃よりも低い温度なので凍傷を起こしてしまわないよう気をつけてください。
b.アイスパックを直接痛いところにあてます。
時間は10分前後で、感覚がなくなるまで冷やしてください。
あまりに冷たければ、一度アイスパックを取って休んでもかまいません。また、痛みや熱感が出たら、続けてアイシングをしてください。
c.アイシングを続けるのは長くとも3日までです。熱感が取れたら、必ず冷やすのをやめてください。また、睡眠時はアイシングはやめてください。
d.アイシングで応急処置をした後は、念のために整形外科病院で診てもらってください。
※ アイスのンなどの化学製品を使う場合は、冷えすぎている可能性があるため、タオルを当てた上から冷やして、直接皮膚に当たらないようにしてください。

② 湿布に塗布されている薬剤による効果
湿布には、「サリチル酸メチル」や「インドメタシン」、そして「ケトプロフェン」というような炎症・痛みを抑える薬剤が塗布されているものがあります。
このような薬剤は、よく効く反面、副作用もありますので、使い方には要注意です。
基本的に、痛みが和らいだら、貼るのを控えた方がいいです。さもないと、副作用が徐々に現れてきます。くれぐれも、長期間の使用は避けましょう。

2.副作用には注意が必要
最近お医者さんからもらう湿布は、よく効くようになってきている反面、薬効効果の強い消炎・鎮痛成分が配合されています。
そして湿布にも薬剤が塗布されていれば、効果も強くなり、それだけ副作用も強くなるので、気軽に使えるからといって、これを無視するわけにはいきません。
例えば、有名な薬剤であるインドメタシンが塗布されている場合は長期間の使用で胃腸の障害を引き起こしたり、使った部分の筋肉がやせてしまうことがあるそうです。
また、喘息の症状を悪化させる可能性もあるので、持病があったり、他の薬を使用している場合は、使用して問題ないかどうかを事前に確認する必要があります。
やはり薬は薬。使う時には成分の特長をよく確認して、必要最低限に留めておくのが得策と言えそうです。

☆★ モーラステープの副作用 ★☆
最近、どこの整形外科でも、捻挫や打ち身の時に出すようになった「モーラステープ」ですが、『光線過敏症』という副作用があるのをご存じですか?
これは、紫外線によって起こる皮膚炎のことです。
モーラステープに含まれている「ケトプロフェン」という成分は、紫外線に当たると光接触皮膚炎を引き起こすと考えられています。
モーラステープを使用した時に光接触皮膚炎になると、貼った場所が赤くなったり、ぶつぶつができたり、腫れあがったり、強いカユミや水ぶくれなど、さまざまな症状が現れて、ひどいときには全身に広がったりすることもあるそうです。
ただ、これは通常の接触性皮膚炎とは異なっていて、日光に当たらなければ症状は起きません。
つまり、そのテープが貼ってある場所に紫外線を当てさえしなければ光接触皮膚炎を予防することができるのです。

『モーラステープの使用上の注意』
① 衣服による紫外線の防御をする
濃い色や暗い色ほど紫外線をカットします。また、ポロシャツに使用される厚手のニット素材などはカット率が高く、薄地のローンや織り目が粗いガーゼなどはカット率が低いようです。なるべく紫外線遮断効果の高い衣服で貼付部を覆うことが大切です。
② 屋外での作業は避ける
モーラステープの使用中および使用後は、湿布していた箇所を強い紫外線に当てることは避ける必要があります。草むしりや、夏場の水泳など、屋外でのスポーツをする際は注意しましょう。
③ 曇りの日でもガラス越しの紫外線に注意
紫外線は曇りの日でも、晴れた日の60~80%の紫外線が透過すると言われています。また、紫外線はガラスを透過しますので、窓際で過ごされる方や、車を運転する際などはガラス越しの紫外線にも注意が必要です。
④ 貼付が終わっても4週間は紫外線に当てない
はがした後でも少なくとも4週間は、衣服などにより、使用していた患部を紫外線に当てないようにすることが大切だそうです。

3.こんなときはどうすればいいの?
普段の生活の中で、温めたらいいのか、冷やしたらいいのか、わからないことがあると思います。処置の仕方を間違えると、直りが極端に遅くなる場合もありますので気をつけなければなりません。
そこで、その簡単な見分け方について紹介します。
① 冷やさなければいけない場合
これは、触って熱がある場合だけに限られます。
風邪で高熱が出ている場合は、氷枕などで冷やします。
また、捻挫や肉離れなどのように、触ってみて熱っぽい場合もアイシングなどで冷やした方が痛みは取れます。

② 冷やしてはいけない場合
肩こり、腰痛、五十肩、膝の痛み、筋肉痛、神経痛、などなど。一般に、このような症状が慢性化している場合は、絶対に冷やしてはいけません。
このような場合は、薬剤が塗布されている湿布を貼るか、使い捨てカイロなどで温めるのが得策です。

☆★ 使い捨てカイロと低温やけどについて ★☆
使い捨てカイロは、1978年にロッテがホカロンという商品名で販売したのが始まりだと言われています。
そこで、町で売られている2種類の使い捨てカイロの特徴を調べてみました。
すると、Aという商品では、最高温度70℃(平均温度56℃)、持続時間9時間でした。
また、Bという商品では、最高温度64℃(平均温度51℃)、持続時間9時間でした。
一般の使い捨てカイロは、直接皮膚に当てず、衣服を間に挟むようにと説明書きにあります。
しかし、誤って身体に直接当てていることで、低温やけどの原因となるのです。
低温やけどの発生には、温度と時間が大きく関係しています。
安全性認定基準を満たした消費生活用の製品に「SG」マークを出している製品安全協会によると、低温やけどを負ってしまうおおよその目安は、44℃で3~4時間、46℃で30分~1時間、50℃では2~3分だと言っています。
ということは、最初に述べたような使い捨てカイロを直接皮膚に当てておいた場合、2~3分で低温やけどをしてしまうことになります。

4.まとめ
薬剤の塗布された湿布の使用、そしてアイシングによる冷却や、使い捨てカイロによる保温は、痛みを取る点でよく用いられる方法です。
しかし、間違った使い方をしていると、症状の悪化につながることがあります。
次の3つの点にご注意ください。
① 薬剤の塗布された湿布の長期使用は避けましょう!
② 痛みがあっても、熱感のない場所は冷やさないようにしましょう!
③ 使い捨てカイロで温める場合は、低温やけどに気をつけましょう!

先月の健康講座では、ぎっくり腰で体操ができず、皆さんご迷惑をおかけしました。
その時、いただいた湿布のおかげで、もうすっかりよくなりました。本当にありがとうございました。
夏の暑さはこれからが本番です。水分補給に心がけ、来月の講座まで、お元気でお過ごしくださいね。

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