7.認知症を起こす病気って

さて、今日の重田塾は「認知症」についてです。

認知症、以前は痴呆でしたよね。
認知症を起こすのは、大脳に何かが起こっていることは想像がつくと思います。
原因不明で広範囲に大脳皮質細胞および白質が変性して認知症を生ずるものを大脳の変性疾患と呼んでいますが、
これには、初老期認知症と老年認知症があります。
また、類似の症候を呈するものを二次性認知症といい、脳血管障害、感染症(梅毒など)、
内分泌疾患(粘液水腫など)、代謝性疾患、膠原病などでも発症します。

まずは初老期認知症からです。
原因不明で初老期、つまり40歳ぐらいから認知症を主症状として発症するもので、大脳の萎縮性疾患です。
アルツハイマー病とピック病が代表的です。

アルツハイマー病について
慢性進行性器質性認知症を主症状とするもので、40~60歳に発症します。
大脳皮質の広範な細胞消失、グリア増殖、アルツハイマー神経原線維変化の出現などが特徴です。

症状としては、

① 精神症状
新しいことの記憶障害、場所や時間の見当識の障害、計算や判断の障害などが現われ、
徘徊もみられます。末期には植物状態になります。

② 大脳巣症状
言語障害、失行、失認がみられます。会話では同じことの繰り返しがみられるとともに、
言語の健忘や言語理解の嶂害もみられます。
失行、失認についても日常行っていた行為ができなくなる観念失行や身体的な失認が起こります。

③ 神経症状
筋硬直を起こして、パーキンソン症状である小刻み歩行がみられるようになります。
また、てんかんや四肢の振戦を生ずることもあります。 また、病識が消失しています。
治療としては、適切なものはなく、対症療法のみで、介護が重要となります。
発症後、5~8年で死亡します。

ピック病について
初老期に出現する慢性進行性の認知症です。
アルツハイマー病の頻度の約10%とされ、女性に多いです。
前頭葉と側頭葉に比較的限局した萎縮が特徴です。
神経細胞の消失、グリア増殖、ピック細胞などがみられます。

アルツハイマー病に類似の症状を呈しますが、初期から人格の変化が著明なことが特徴的です。
自発性欠如、無関心、無感動、自制力の消失、衝動的な行動、恥知らずなどや、
滞続言語(会話の中に同じ内容の言語が繰り返される)が見られます。
末期は無言、精神荒廃状態となります。
治療としては、対症的療法のみです。
5~7年で死亡します。

続いて老年認知症についてです。脳血管性認知症と、アルツハイマー型老年認知症に分けられます。

脳血管性認知症(多発脳梗塞型認知症)について
脳動脈硬化から循環障害・小梗塞など脳実質の破壊性変化が起こり、認知症が出現します。
脳卒中に伴う認知症が代表的です。
明らかな脳血管障害の発作なしに認知症を示す型も多いです。
脳血管障害の21~35%が認知症を呈します。日本人は欧米人に比べて、脳血管性認知症が多いとされます。
大脳皮質下の白質を中心に小梗塞病巣が散在することが多いです。
症状の発症は、記銘力低下からはじまることが多いです。
記銘力低下の割に判断力はかなり保たれていて、知的機能にむらがあるため、「まだら認知症」ともいわれます。

また、階段状に悪化したり、改善傾向を示すなど、症状に動揺のあることも特徴です。
仮性球麻痺、小刻み歩行、深部反射亢進、不全片麻痺、強迫泣、強迫笑などの神経症状を伴っている例も多いです。
治療としては、基礎疾患として高血圧症や糖尿病を持っている人が多いので、その治療を行います。
脳血管拡張剤、脳代謝改善剤、血小板凝集抑制剤などが投与されます。

アルツハイマー型老年認知症について
大脳の萎縮により徐々に進行性に出現する認知症です。
70歳以降に多く、女性により多いです。
アルツハイマー病と同様の大脳変性を示します。
記銘力・記憶力障害と、人格の軽度の変化で初発することが多いです。
次第に、自発性低下、無関心、情緒障害、判断力・理解力低下などが現れてきます。
末期には植物的存在となります。
治療は対症療法のみです。

今回はここまでです。

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