8.保険って

今回の重田塾は「保険」についてです。

保険の説明の前に、まずは国民医療費についてお話しします。
国民医療費は、よくニュースでも取り上げられますのでご存知と思います。
具体的には2005年度は33兆円を超えていました。 ここで問題は、国民医療費に含まれるものです。
具体的には、健康保険でまかなわれる診療報酬費、薬局調剤費(市販薬を含まない)、看護費、移送費、
労災保険でまかなわれる費用、自動車事故等の際の全額自己負担分、老人保健(あえて)による費用、公費負担分などです。
つまり健康保険証などをもとに病気と診断され、治療行為が行われた場合です。

じゃあ、国民医療費に含まれないものは何でしょうか。
上記と比較すると、健康保険でもまかなわれない費用ということになるのですが、
具体的には正常分娩費、健康診断の費用、予防接種の費用、義肢・義眼の購入費、
差額ベッド分、歯科医療の差額分、市販薬の購入費などです。
健康診断や予防接種は病気でないかを調べたり、ならないためですから仕方ないにしても
妊娠も健康保険の対象にならないんですよね。ただし、臍帯異常とかだと保険対象になります。

さて、もう少しだけ細かくみますが、覚えておく必要はないです。
国民医療費に占める割合を見ると、医療保険等給付分:45.9%、老人保健制度負担分:32.9%、
患者負担分:15.3%、公費負担制度負担分:5.8%となっています。
老人保健はなくなっていますが、ここでもあえて書いてます。新しいデータはまだありません。

介護保険については、含まれていません。
ですので、介護保険がはじまった2000年度は国民医療費が減少したのですが、
今は再び年に約1兆円ずつ増えています。
また、疾患別に占める割合が多いのは、循環器系:22.4%、新生物:11.4%、尿路性器系:8.2%、
呼吸器系:8.1%、精神及び行動の障害:8.0%となっています。

国民医療費の増大とそれに関する問題
さて、最後に国民医療費増大の原因を考えてみます。
患者側の要因としては、人口増加、高齢化、高度医療への要求、生活習慣病の増加などがあります。
医療を行う側の要因としては、医療機関や医療従事者の増加、医療機械の導入、医薬品価格の上昇、
経営側の過当な供給体制、診療の精密化および高度化診療報酬の値上げなどが挙げられます。

全段はここまでです。ここからがようやく医療保険についてです。
日本は現在「国民皆保険制度」を取っています。これは、1961(昭和36)年からです。
さて、国民皆保険制度とは、すべての国民が各種の保険に加入し、
被保険者の給与から、あるいは直接に、保険料を毎月支払う体制のことです。
医療保険とは、被保険者が傷病や障害によって医療機関にかかった際、
その費用が、保険者(政府・組合・事業主など)から医療機関に支払われる制度です。
医療機関には、費用が支給されますが、医療を受ける際、被保険者には、直接費用が支払われるのではなく、
治療をはじめとする医療を受けることを通して保障を受けることができるのです。
具体的には、診療、薬剤、治療材料の支給、処置、手術などが行われ、これを現物給付と呼んでいます。

上記で「各種の保険」と書きましたが、医療保険の種類にはどんなものがあるのでしょうか?
大きく分けて被用者保険と国民健康保険があります。

まずは、被用者保険について

① 組合管掌健康保険
大企業(1,000人以上)の従業員が加入します。企業内で運営するのですが、後期高齢者
保険がはじまりかなり苦しい模様です。西濃運輸の組合管掌保険の解散は衝撃でしたね。

② 政府管掌健康保険
平成20年10月からは全国健康保険協会が運営する全国健康保険協会管掌健康保険となりました。
中小企業(5人以上)の従業員が加入しています。

③ 船員保険
船会社の従業員や家族が加入する保険です。

④ 日雇い労働者健康保険

⑤ 共済組合保険
国家公務員等共済組合、地方公務員等共済組合、私立学校教職員共済組合があります
。教員、警察官、消防署員などが加入します。

次は国民健康保険について
基本的には自営業や農業などに従事する者が加入します。
保険者、つまり運営は、各市町村ならびに国民健康保険組合です。
国民健康保険組合とは、自営的色彩の強い業種のうち、医師、歯科医師、薬剤師、
食品販売業、土木建築業、理容美容業、浴場業、弁護士などが加入するものです。
また、地方により特色があり、京都なら花街国保、東京の芸能人国保等、地域により種類が一定しません。

さて、知ってもらっておきたい医療の給付です。

① 医療保険による給付
現物給付または療養の給付が行われます。

② 施術に対する給付
金銭給付又は療養費の給付(償還払い、代理人払い)が行われます。
医療機関で診療を受けた際、本来は患者が全額を支払い、
のちほど保険給付額を保険者に請求して返してもらいます。
これを償還払いと呼んでいます。これは患者にとって負担が大きいので、
医療機関が代わりに保健者に請求します。
これを代理人払いと呼びます。だからこそ医療費は1割や3割で受けられるのです。

その他
私たちがよく遭遇するものに、生活保護(民生)、労災、母子や身体障害等の医療券があります。
医療券に関しては、原則的に発行主体が都道府県で、発行都道府県外の医療機関では使用できません。
他府県の医療機関にかかった場合、本体の健康保険のみ適応で、一部負担金については
通常は支払い明細を添え、本人が都道府県窓口に後から負担分の請求をする形になります。
阪神淡路大震災以降、兵庫県に関しては、他府県であっても取り扱うこととなってます。
被爆者や水俣病等の特殊なものに関しては、取り扱いできますが、
多少、都道府県により取り扱い方法が違うことがあるようです。

次は、後期高齢者医療制度(通称:長寿医療制度)について
2008年4月1日に実施されました。

対象者は

① 75歳以上の者
すべてこれまで加入していた医療保険から自動的に後期高齢者医療に移行されます。

② 65歳~75歳で、障害認定を受け、旧老人保健制度の対象であった者
後期高齢者医療に移行するか否かを選択できます。
保険料については、加入者は全て個人で保険料を負担します。
保険料は都道府県ごとに設定され、所得割額(被保険者の所得に応じてかかる金額)と
均等割額(被保険者全員に均一にかかる金額)との合算により算定されます。
保険料は原則として年金からの天引きで徴収(特別徴収)されます。
医療機関での受診については、医療費の自己負担率や月々の負担限度額は旧老人保健制度と同じで、
一般の者は1割負担、現役並み所得のある者は3割負担となっています。

最後に公的医療負担について
医療扶助として、生活保護法による現物支給があります。
ちなみに生活保護法による8つの保護には、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、
医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助があります。

公的医療負担として

① 法律によるもの
結核予防法(平成19年に感染症予防法に吸収)、児童福祉法(育成医療、療育医療)、
身体障害者福祉法(更生医療)、母子保健法(未熟児に対する養育医療)、
原子爆弾被爆者の医療などに関する法律、戦傷病者特別援護法による規定など。

② 予算措置によるもの
特定疾患(スモン、パーキンソン病など45疾患)、小児慢性疾患(小児癌など10疾患)などがあります。
これで医療保険が終わりです。

よし、これが本当の最後です。介護サービス行政について
介護保険制度は、2000年4月に施行されました。
これは、利用者の選択により保健・医療・福祉にわたる介護サービスが総合的に利用できる制度です。

介護保険制度の概要
保険者は市町村です。
被保険者は40歳以上の者です。
要介護の発生率、保険料の算定方式、徴収方法などにより、
第1号被保険者と第2号被保険者に分けています。

第1号被保険者
65歳以上を第1号被保険者とし、原因にかからわず身心の状況において認定がだされます。
第1号被保険者の場合は 、認定が無くても介護 保険証は交付されています。

第2号被保険者
40~64歳までは第2号被保険者、通常介護保険証は交付されていません。
認定が出た時のみ発行されます。
第2号被保険者の認定には条件があり以下の16疾病により心身機能が低下したものに限ります。

  1. 筋萎縮性側索硬化症(ALS))
  2. 後縦靭帯骨化症
  3. 骨折を伴う骨粗鬆症
  4. シャイ・ドレイガー症候群
  5. 初老期における認知障害(アルツハイマー病、ピック病、脳血管性認知症、クロイツフエルト・ヤコブ病等)
  6. 脊髄小脳変性症
  7. 脊柱管狭窄症
  8. 早老症
  9. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び網膜症
  10. 脳血管疾患
  11. パーキンソン病
  12. 閉塞性動脈硬化症
  13. 関節リュウマチ
  14. 慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、びまん性汎細気管支炎)
  15. 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
  16. 末期がん(概ね余命6ヶ月以内と診断されたもの)

給付は、要介護状態もしくは要支援状態と判断された場合に行われます。
要介護認定は、初回は6ヶ月、2回目以降は6ヶ月~2年の認定期間となります。
市町村への申請 → 調査 → 関係医師の診察 → 市町村などに設置される「介護認定審査会」という順序で決定されます。
介護サービス計画(ケアプラン)については、利用者が、居宅介護支援事業者に依頼して、
本人の心身の状況や希望等を考慮して介護サービス事業者との連絡調整を行って貰い、
利用する在宅サービスの種類や内容を定めた居宅サービス計画(ケアプラン)を作成してもらうことができます。

また、こうした居宅介護支援サービスを受けずに、利用者が自らサービスの利用計画を作成し、
在宅サービスを受けることもできます。
介護計画は、サービス導入時には必ず作成しなければなりません。

又、サービス変更時、更新時には見直すことになっています。
介護計画にはケアマネが作成するものと、それを元に作成される各サービス担当者が
提供サービスごとに作成する個別計画の2種類があります。
私たちがケアカンファレンス(担当者会議)に呼ばれたり、助言を求められるのは、
このケアマネが作成する介護計画に関する担当者会議です。

ということで、医療保険と介護保険は違うので、訪問マッサージとヘルパーは共存できるのです。
今回はここまでです。

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