13.片麻痺の評価法って
今日は脳卒中麻痺のリハ臨床について書きます。
麻痺の回復可能な期間は一般的に発症後6ヶ月と言われていて、最終的な回復レベルを100%とすると、
発症後3ヶ月で80~90%回復し、発症後6ヶ月で90%以上の回復が終了し、
それ以後はほぼ固定した状態となると言われています。(これをプラートに達したと言います)
しかし、これで患者さんが何もせず、医療や介護のリハ介入がないと
運動能力やADLは加齢と共に確実に右肩下がりに落ちていきます。
そこでリハ介入があるとその曲線は少し上昇し、介入が無くなるとまた下降するという凸凹曲線で
右肩下がりにはなりますが、下降速度は遅くなります。
したがって在宅でもリハをするということは十分に意味があることなのです。
また、不動による廃用症候群も予防できADLの低下を下支えする効果も期待できます。
片麻痺は、発病初期のショック状態としての弛緩期から次第に痙性が現れ、
共同運動を経てこれからの分離、それぞれの関節の独立した運動へと回復していくのです。
まず、共同運動の解説をしておきます。
共同運動とは、中枢性麻痺の回復過程において、粗大な運動が随意的に可能になってきた時期に、
上肢、あるいは下肢全体の屈曲、または、伸展を同時に行うことはできても、
個々の関節運動を切りはなして行うことが困難な現象をいいます。
ア.上肢の屈曲共同運動パターン
肩甲帯内転挙上、肩屈曲外転外旋、肘屈曲、前腕回外、手関節掌屈。
イ.上肢の伸展共同運動パターン
肩甲帯外転下制、肩伸展内転内旋、肘伸展、前腕回内、手関節背屈。
ウ.下肢の屈曲共同運動パターン
股屈曲外転外旋、膝屈曲、足関節背屈、足部内反。
エ.下肢の伸展共同運動パターン
股伸展内転内旋、膝伸展、足関節底屈、足部内反。
脳卒中で運動麻痺の在宅患者の代表的な評価法があります。
ブルンストロームテストと言います。
簡単なものなので憶えておいた方が、医師への経過報告時等に役立つと思います。
ステージⅠ
筋が弛緩して、ブラブラして自分の意思で動かせない(随意運動がみられない)状態で、最も程度が重い。
ステージⅡ
何かの拍子で手足が勝手に動く(複数の筋の活動が調和の取れた状態で行われる共同運動がわずかに現れる)。
痙縮が出始める(錐体路症状の1つとして抑制が効かなくなって筋伸展反射が著しく亢進し、筋緊張も亢進して筋がつっぱる)
ステージⅢ
随意的な共同運動として関節の運動はできるが、痙性は高度(自分で動かせるが1つの動作に他の筋も一緒に動いてしまい、
一定のパターンでしか動かせず、他の関節も動く共同運動となる)
*ここまでは日頃やっているPNFの共同運動で筋力を引き出してやります。
*この段階の後期又はステージⅣからPNF分離運動を始めます。
ステージⅣ
共同運動パターンが崩れ、1つ1つの関節が分離して動く分離運動ができるようになり、
筋のつっぱり(痙性)が弱まる(上腕を上げたり、膝の屈伸ができるようになる)
ステージⅤ
分離運動が上手になり、逆共同運動の組み合わせもてきるようになる。
(肘を曲げないで手を頭上まで上げられたり、立位踵接地での足背屈が可能)
ステージⅥ
分離運動が自由にできるようになり、正常に近い運動が円滑にできるようになる。
一番軽い麻痺で書字や食事のリハを開始する段階。
本当は同評価法で上肢・下肢・手指等の評価法もあります。
【まめ知識】
プラートに達して後、眼に見える回復を示す症例の研究が徐々に進み、
昨年、アメリカの研究者の最新の発表で、介護やリハの方法により、
違う支配部分の脳が、代替支配し回復していくメカニズムがかなり明らかになってきたようです。
最近、介護や医療の現場でも、脳の可塑化という言葉で、時々耳にするようになりました。