15.糖尿病って

今回は、糖尿病です。
かなりの患者数ですので、しっかり学習しましょう。

糖尿病は、インスリンの絶対的不足または分泌低下ないし作用不足により、
糖代謝が障害され高血糖状態を示す病態です。
血糖を上げるホルモンはたくさんありますが、下げるのはインスリンしかないので、
インスリンというのは本当に大切なホルモンです。

糖尿病には2つの型があります。以前は若年型と成人型と言ってました。今は、
① インスリン依存型、IDDM、1型
② インスリン非依存型、NIDDM:2型:わが国の糖尿病の90%はこの型であす。

2002年の厚生労働省の調査では、糖尿病患者が740万人、予備患者が880万人と推計され、
成人の6.3人に1人の割合で糖尿病とされています。

さて、ここからは、ちょっと難しいけど、どのようにして糖尿病になるかを学習しましょう。
インスリンは膵臓のランゲルハンス島のβ細胞でつくられる蛋白性のホルモンです。
直接血管内へ内分泌され、体内のあらゆる組織の細胞に供給されます。
ヒトが食物を摂取して血糖が増加するとインスリンの放出が増加します。
生体内でインスリン放出を刺激するのはグルコースの他、果糖、マンノース、
リボース、アミノ酸、ACTH、カルシウム、カリウムなどです。
ということで、インスリン放出は糖質を摂った時だけでなく、蛋白質を摂っても放出されます。

なので、過食、美食によりランゲルハンス島に負担がかかり、糖尿病を誘起することになります。
糖尿病になるとランゲルハンス島からのインスリン放出が不足し、血糖の上昇と尿中へのグルコース排出(糖尿)を生じます。
これはインスリン不足により筋肉・脂肪組織へのグルコース取り込みが減少するのと、
肝臓から血液中にグルコースが移行する割合が増すという2つの血中グルコースの増加する機構が生ずるからです。
これらの結果として、細胞外グルコース、例えば血液中グルコースが過剰であるにかかわらず、
細胞内のグルコースの不足が起こります。
血糖値が上昇して170㎎/dl以上になると腎臓 の尿細管での再吸収の限度(腎のグルコース排泄閾値)をこえるので、
尿中にグルコースが排泄され、糖尿がみられるようになります。

うーん、難しかったですね。さて、2つの型について、簡単におはなししましょう。

① インスリン依存型、IDDM、1型
遺伝:HLAと相関あり
環境因子:特発性、自己免疫
インスリンの分泌不足
発症年齢:15歳以下の若年者
起こり方:急激、易ケトーシス
治療:インスリン注射不可欠

② インスリン非依存型、NIDDM、2型
遺伝:遺伝的素因が強い
環境因子:肥満、過食、飲酒、運動不足、ストレス
インスリンの作用不足
発症年齢:40歳以上の成人
起こり方:緩徐
治療:食事療法、運動療法、インスリン注射など

 

さて、重要な症状です。
口渇、多飲、多尿、体重減少、全身倦怠感、インポテンツなどがみられます。
糖尿病性ケトアシドーシスになると、悪心、嘔吐、アセトン臭の呼気、大呼吸、意識障害などを生じます。
高浸透圧性昏睡を起こすと、著明な脱水、意識障害を伴います。

合併症として、a.白内障、b.細小血管症(網膜症、腎症、大血管障害)、c.ニューロパチー(神経痛、手足の神経障害)、
d.壊疽、e.感染症などがあります。
以上のうち、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害を3大合併症といいます。
糖尿病での失明、人工透析の増加は非常に問題となっています。

 

診断も勉強しておきましょう。

① 血糖値、HbA1Cの上昇がみられる。
血糖値は、静脈血漿で空腹時血糖値140㎎/dl以上、
または任意の時刻の血糖値200㎎/dl以上であれば糖尿病と診断してよいです。
HbA1C、最近よく聞く検査項目ですよね。
これは血中のヘモグロビンにブドウ糖が結合したもので、これを測定すると過去1~2ヶ月間の
血糖のコントロール状況が分かるというものです。正常値は4~6%。

② 尿糖が陽性でケトアシドーシスになると、尿ケトン体が陽性となります。

③ ブドウ糖負荷試験
糖尿病型血糖曲線を示し、血中インスリンの上昇反応が低下します。
ブドウ糖負荷試験(OGTT)とは、糖尿病が疑われるとき行われます。
通常75gのブドウ糖を溶かした液を飲ませてから血糖を測定。
判定基準は糖尿病では空腹時値140㎎/dl以上、2時間後200㎎/dl以上です。
正常型では空腹時110㎎/dl未満、2時間後160㎎/dl未満です。
糖尿病型でも正常型でもない場合は境界型と呼びます。

④ 合併症の診断
網膜症:眼底検査
神経障害:神経伝導速度検査
腎症:尿検査、尿微量アルブミン、BUN、クレアチニンなど生化学検査
動脈硬化症:総コレステロール、中性脂肪

 

治療についてです。

① 食事療法
総エネルギーを制限し、バランスのよい食事をします。

② 運動療法
高血糖や脂質異常症の防止。血管障害などの状態に応じて行います。

③ 薬物療法
経口血糖降下剤としてスルフォニル尿素剤やビグアナイド剤。

④ インスリン療法
インスリン依存型糖尿病では必須。
インスリン非依存型では経口薬が効かない場合や重症の合併症がある場合。

⑤ 人工透析
腎障害が進行し腎不全になった場合。
予後は、腎不全、動脈硬化症などの合併症の程度に左右されます。

以上です。糖尿病は合併症が怖いのです。早期発見による早めのコントロールが大切です。

« 前のページへ戻る