16.関節リウマチって

さて、ここまでの重田塾の流れを復習します。
私たちが訪問マッサージを行う患者さんは、寝たきりの方が多いです。
なぜ、寝たきりになるかと言えば脳卒中などの後遺症でした。

脳卒中は、脳梗塞や脳出血により起こりました。
脳梗塞には、脳塞栓と脳血栓がありました。
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血は脳血管疾患として死因の第3位ですよね。
その基盤の一つには動脈硬化がありました。

動脈硬化は脂質異常症の上に形成されています。
これらに関係するということで、生活習慣病の糖尿病、高血圧なんかも勉強してきました。
一応、ここまではつながりのある疾患の勉強をしてきました。
今回からは、単発的ですが、重要な疾患についての勉強です。

その第1弾は関節リウマチです。
以前は慢性関節リウマチと言ってましたよね。
ちなみに急性関節リウマチがあるのかといえば、以前はあったんですよね。
今は、リウマチ熱と呼んでいます。時代とともに疾患名も変わるんですよね。

さて、関節リウマチといえば膠原病ですよね。
じゃあ、膠原病って?
私が習ったころは、「原因不明の全身の結合組織をび漫性におかす炎症性の疾患」でした。
今は、「全身の膠原線維(コラーゲン線維)にフィブリノイド変性という共通の病変がみられる疾患群の総称」となっています。
古典的な膠原病と呼ばれる疾患は6つあります。
関節リウマチ(RA),全身性エリテマトーデス(SLE),強皮症(進行性全身性硬化症,PSS),
皮膚筋炎(多発性筋炎,DM),結節性多発性動脈炎(PN),リウマチ熱(RF)のです。
また、膠原病周辺(近縁)疾患と呼ばれる疾患もあります。
べーチェット病,シェーグレン症候群,ウェゲナー肉芽腫,過敏性血管炎,血栓性血小板減少性紫斑病などです。

 

さて、膠原病共通の特徴です。

① 全身性炎症性疾患
発熱,体重減少など全身症状がある。

② 多臓器傷害性疾患
複数の臓器に病変がある。

③ 慢性永続性疾患
再燃と寛解を繰り返す。

④ 自己免疫疾患
種々の自己抗体が証明される。

⑤ 多因子遺伝性疾患
遺伝的な素因がある。 

⑥ 結節性多発性動脈炎以外は女性に多い。

 

主要な一般症状についてです。

① 初発症状
発熱(微熱または高熱),関節痛,レイノー現象など。
レイノー現象:寒冷刺激やストレスなどの精神的要因によって指趾の細小血管の発作攣縮をきたし,
発作的に色調変化(白→暗紫色→紅潮)が生じる。

② 全身症状
全身倦怠感,易疲労感,体重減少,食欲不振など。

 

ここからがようやく関節リウマチ(RA)についてです。
簡単に言えば「慢性多発性進行性の関節炎」です。
20~40歳代の女性に多いです。
症状は、何となく覚えがあるでしょうが、一応、まとめてみます。

① 早期症状
朝のこわばり,多発性関節炎(運動時痛,発赤,腫脹,圧痛など),皮下結節,レイノー現象など。

② 晩期症状(関節の変形)
スワンネック変形,ボタンホール変形,尺側偏位(オペラグラスハンド),マレット変形(槌変形),ハンマー趾,外反母趾など。

③ 一般症状
発熱(微熱),食欲不振,易疲労性,体重減少など。

④ その他の障害
肺・心障害,血管炎,手根管症候群など。

 

変形を簡単に説明しておきます。
スワンネック(白鳥の首)変形:PIP関節の過伸展とDIP関節の屈曲。
ボタンホール(バッタの脚)変形:PIP関節の屈曲とDIP関節の過伸展。
尺側偏位(オペラグラスハンド):第2~5指がMP関節で尺側へ屈曲。
マレット変形(槌変形):DIP関節のみが屈曲(まむし指)。
ハンマー趾(槌趾):MP関節で背屈し,PIP関節で屈曲。
外反母趾:MP関節で母趾が外反。

略語も説明しておきます。ただし、手の関節として。
MP:中手指節関節
PIP:近位指節間関節
DIP:遠位指節間関節
診断は、RAテスト陽性(80%),CRP陽性,赤沈値亢進,白血球数増加,赤血球数減少,
関節裂隙の狭小化,骨破壊,亜脱臼などとされていますが、アメリカリウマチ協会の改訂診断基準が有名ですよね。

【関節リウマチの診断基準】

  1. 朝のこわばり1時間以上(6週間以上続く)
  2. 3関節領域以上の腫脹(6週間以上続く)
  3. 手首,中手指節(MCP)・近位指節間(PIP)関節の腫脹(6週間以上続く)
  4. 対称性関節腫脹
  5. 手・指のX線写真像の変化
  6. 皮下結節
  7. リウマトイド因子

上記7項目のうち4項目以上があれば関節リウマチと診断する。

 

さて、治療です。

① 生活指導
過労を避け,十分な栄養と休養をとり,全身状態を良くする。罹患部の保温に努め,加重負荷を少なくする。

② 物理療法
拘縮や変形を防ぐために,適度の運動練習を行う。温浴,マッサージ,超音波療法などが行われる。

③ 薬物療法
非ステロイド系抗炎症薬,金製剤,D一ペニシラミン,副腎皮質ステロイド薬,免疫抑制薬など。
「金」が効くということで、昔は障害された関節に金鍼をわざと埋め込んでおく
埋没鍼が行われていましたが、今は行ってはいけませんよ。
金剤は腎障害を引き起こす可能性が大きいです。

④ 外科的療法
関節の破壊・変形が強く,関節機能が著しく損なわれたときには手術し,人工関節に置換。
このような治療をしても、寛解と再燃を繰り返し,完全寛解は少ないです。
10年の経過をみますと約50%は改善ないしは安定の状態ですし,
約25%は進行型,約10%は重度の機能障害を残すといいます。
血管炎を伴うものを悪性リウマチといい,予後が悪いです。

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