20.肩関節って
関節の基本構造が終わったので、まずは6大関節の勉強からです。
トップを切るのはもちろん肩関節です。
最近は「かたかんせつ」と呼びます。
関節頭は上腕骨頭で、関節窩は肩甲骨関節窩です。
形態的には球関節です。
身体中、最も可動域が大きいです。
特徴として、上腕骨頭は球の約1/3の面積です。
関節窩は狭く、浅く、関節頭の1/3~2/5を容れるのみなので、関節唇が付着しています。
しかし、関節唇を含めても、なお関節頭より小さいので下記の靭帯が付着します。
関節上腕靭帯:関節唇の上・前・下部から解剖頚に付きます。
烏口上腕靭帯:烏口突起の外側縁から関節包の上部を被い関節包に癒合して大・小結節に付きます。
関節包の上面を補強する強い靭帯です。
肩関節の運動範囲と主力筋、補助筋を示します。
正常な可動域を覚えておくことは大切です。
また、筋が弛緩性麻痺となるとその作用の運動が困難となり拮抗筋の作用に引っ張られます。
痙性麻痺を起こすと、作用の方向へ引っ張られ拘縮を起こします。
屈曲:0°~180°
主力筋:三角筋前部線維(腋窩神経)、烏口腕筋(筋皮神経)
補助筋:三角筋中部線維(腋窩神経)、大胸筋(外側・内側胸筋神経)、
上腕二頭筋(筋皮神経)、前鋸筋(長胸神経)、僧帽筋(副神経、頚神経叢の枝)
伸展:0°~50°
主力筋:広背筋(胸背神経)、大円筋(肩甲下神経)、三角筋後部線維(腋窩神経)
補助筋:小円筋(腋窩神経)、上腕三頭筋(橈骨神経)
外転:0°~180°
主力筋:三角筋中部線維(腋窩神経)、棘上筋(肩甲上神経)
補助筋:三角筋前部線維(腋窩神経)、三角筋後部線維(腋窩神経)、前鋸筋(長胸神経)
水平位外転(外分回し):0°~135°
主力筋:三角筋後部線維(腋窩神経)
補助筋:棘下筋(肩甲上神経)、小円筋(腋窩神経)
水平位内転(内分回し):0°~30°
主力筋:大胸筋(外側・内側胸筋神経)
補助筋:三角筋前部線維(腋窩神経)
外旋:0°~90°
主力筋:棘下筋(肩甲上神経)、小円筋(腋窩神経)
補助筋:三角筋後部線維(腋窩神経)
内旋:0°~90°
主力筋:肩甲下筋(肩甲下神経)、大胸筋(外側・内側胸筋神経)、
広背筋(胸背神経)、大円筋(肩甲下神経)
補助筋:三角筋前部線維(腋窩神経)
棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4つの回旋筋は、肩甲骨から起こり板状の腱となって
前・上・後ろの3方向から肩関節を囲み、癒合してこれを補強・支持しています。
これを回旋腱板(ローテーターカフ)と呼んでいます。
上腕二頭筋長頭の起始の腱は肩関節腔内を通り、次いで滑液鞘に包まれて上腕骨の結節間溝を通ります。
次に肩関節周囲で触察できる骨指標を紹介します。
関節下結節:肩甲骨の外側角(肩甲骨の外側上部の角)に位置する関節窩の尾方の隆起
肩甲骨の外側縁を外側頭方にたどり、その外側端で頭方に向きを変えるところの角を触察します。
肩甲棘:肩甲骨の後面の上1/3の部位で内外側方向に連なる隆起
肩甲骨の位置を確認し、その後面の上部で最も後方に突出する隆起を、
指を頭尾方向に動かしながら外側端まで触察します。
肩峰:肩甲棘の外側端の扁平な突起
肩甲棘を外側方にたどり、その外側端を確認します。
ここから前方に突出する隆起が肩峰です。
この外側縁を前方にたどり、さらにその前縁を内側方にたどり、鎖骨にふれるところまで触察します。
肩峰の前縁は、腹臥位ではベッドに触れるくらい前方に移動していることが多いです。
肩峰角:肩甲棘の外側端の後部の角
肩甲棘の後縁を外側方にたどり、その外側端で前方に向きを変え、
肩峰に移行するところの角を触察します。
烏口突起:肩甲骨の外側角(肩甲骨の外側上部の角)から頭方に突出したのち、前外側方に曲がる突起
鎖骨を触察し、そのすぐ尾方を鎖骨に沿って内側方から外側方にたどり、
鎖骨の中央部を過ぎたところで最初に触れる骨を触察します。
大結節:上腕骨の近位端の外側部の隆起
上腕骨の前面の近位端付近に指を置き、これを動かさずに肩関節を内旋させたとき、
皮下を移動する隆起を触察します。
大結節稜:大結節(上腕骨の近位端の外側部の隆起)から、尾方に続く隆起
上腕骨の前面の近位端付近に指を置き、これを動かさずに肩関節を内旋させたとき、
皮下を移動する隆起が上腕骨の大結節です。
ここから尾方に連なる隆起を触察します。
小結節:上腕骨の近位端の前内側部の隆起
上腕骨の前面の近位端付近に指を置き、これを動かさずに肩関節を外旋させたとき、
皮下を移動する隆起を触察します。
三角筋粗面:上腕骨の前外側面の中央部の隆起
上腕骨の前外側面の中央部で、指を頭尾方向に動かして、
やや前外側方に隆起した部分を触察します。
最後に肩関節周囲の体表のくぼみを紹介します。
三角(筋大)胸筋三角(鎖骨下窩・モーレンハイム窩):鎖骨の下部で、
三角筋前縁と大胸筋との間にできるくぼみです。
腋窩:前壁は大胸筋、小胸筋、後壁は大円筋、広背筋、肩甲下筋、
外壁は上腕骨上部、烏口腕筋、上腕二頭筋短頭、内壁は前鋸筋によって境されています。
肩関節は以上です。