22.脊柱って
このところの患者の病態を見ていると、脊柱管狭窄症が多いように思います。
脊柱の病気、他にも椎間板ヘルニア、後縦靱帯骨化症など、重要な疾患が多いです。
これらの勉強に入る前に脊柱の勉強です。
脊柱は、体幹後壁の正中にあり、身体の中軸となっています。
中に中枢神経である脊髄を入れています
脊柱を構成する骨は、頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙椎5個、尾椎3~5個でした。
ただし、成人では仙椎および尾椎は癒合歯、仙骨および尾骨、各1個となります。
脊柱は生理的に弯曲しています。
つまり、頚部・腰部は前弯し、胸部・仙尾部は後弯しています。
さて、ここからが各論です。
合計32~34個ある椎骨ですが、その基本型と言われるのは胸椎です。
複雑な形をした椎骨ですが、前側の厚い円板状の部分を椎体といいます。
椎体後面から後方に突出する弓状の部分を椎弓といいます。
椎弓は弓状ですので、椎体との間に椎孔という穴をつくります。
椎骨は上下に連なりますが、椎孔が上下に連なってできる管が脊柱管で、中に脊髄を入れます。
椎弓の付け根は、上下ともにへこんでいて、それぞれ上椎切痕および下椎切痕といいます。
椎骨が上下に連なった時、横から見ると、この椎切痕により椎間孔がつくられ、その穴を脊髄神経が通ります。
だから、変形性脊椎症なんかでは、ここで圧迫を受けて障害されるんですよね。
さて、最後に突起です。
覚えているでしょうか、4種7個ありました。
まずは棘突起です。
椎弓の後面正中から後下方へ突出します。
唯一対をなしていないので1個です。
体表から容易に触診できますよね。
詳細については後述します。
続いて横突起です。
その名の通り、椎弓の外側から側方へ突出します。
最後に関節突起です。
椎弓の外側から上方へ突出する上関節突起と、下方へ突出する下関節突起とがあります。
この小さな突起が椎間関節を作るのです。
さて、次は椎間円板の説明です。
臨床では、「椎間板ヘルニア」のように若干省略されて呼ばれますよね。
さて、椎間円板は、その名の通り椎体間にある円盤状の線維軟骨です。
椎間円板が厚いほど可動性が大きいです。
胸椎の中位のものが最も薄く、可動性が悪いです。
加齢により脊柱の可動性が悪くなるのも、この椎間円板が薄くなってくるせいなんですよね。
さて、働きを見てみましょう。
① 椎体と椎体を連結する。
② 弾性体として脊柱の運動および体重を支える。
などがあります。
その特徴といえば
① 中心部の髄核を外周の線維輪がつつむ。
② 脊柱全長の約1/4を占める。
③ 第2・3頚椎の椎体間から第5腰椎・仙骨間までに存在し、椎体を連結する。
④ 脊柱への衝撃に対してクッションの役割を持つ。
などがあります。
この重要な椎間円板の基本的構成要素ですが、ちょっと難しいです。
しかし、様々な疾患に関連しますのでしっかり学習しましょう。
構成要素としては、中心部の髄核、線維輪、軟骨板からなっています。
① 髄核
70~80%の水分を含むゼリー状の組織です。
椎間円板の体積の40~60%を占めています。
② 線維輪
線維軟骨からでできています。
同心円状に配列した層板(コラーゲン線維層)から構成されています。
③ 軟骨板
厚さ1~2㎜で、隅角部を除く椎体の上下面を覆っています。
加齢現象が起こると、含水量が減少し、さらに線維化が亢進します。
すると、椎間円板は薄くなり、弾性が減少します。
そして、運動制限が起こります。
次は、脊柱となるための各椎骨の連結です。
つまり椎間関節についてです。
上位にある椎骨から下に向かって出る下関節突起と、
下位にある椎骨から上に向かって出る上関節突起との間の平面関節です。
接触面積が非常に狭いこともあり、下記の靭帯が補強しています。
椎体間の連結の方が接触面積が大きく安定しています。
しかし、椎体間には椎間円板という軟骨組織が介在しています。
そのため、直接、椎骨同士が接触しませんので、関節とは呼ばれません。
続いて脊柱の靭帯についてです。
① 前縦靭帯
椎体の前面を後頭骨底部から仙椎前面まで張ります。
② 後縦靭帯
椎体の後面、つまり、脊柱管の前を大後頭孔前縁やや上方(斜台)から仙骨管の前壁まで張ります。
③ 黄色靭帯
椎弓間に張る厚く強い靭帯で、多量の弾性線維を含み黄色を呈します。
④ 棘間靭帯
棘突起間に張ります。
⑤ 棘上靭帯
頚椎以下の棘突起後面に張り、仙骨後面まで達します。
⑥ 項靭帯
棘上靭帯が項部で発達したものです。
ここまでが重要です。
一応、下記も紹介しておきます。
⑦ 横突間靭帯
横突起間に張ります。
〔腰仙連結部〕
⑧ 腸腰靭帯
腰仙連結の外側で、第4・5腰椎の肋骨突起と腸骨稜の間に張ります。
〔仙尾連結部〕
⑨ 浅後仙尾靭帯
⑩ 深後仙尾靭帯
⑪ 前仙尾靭帯
⑫ 外側仙尾靭帯
などがあります。
これらにより椎骨は連結され脊柱となります。
体表から触察できる部位を記します。
① 棘突起
第2頚椎:後正中線上を後頭骨から尾方にたどり,
最初に触知される大きな突起が第2頚椎の棘突起であるので,これを触察する。
第7頚椎:頚部を屈曲したとき,頚胸椎移行部付近で最も後頭方に突出する突起が
第7頚椎の棘突起である場合が多いので,これを触察する。
第3胸椎:後正中線上で,左右の肩甲骨の肩甲棘の基根部を結ぶ線上に存在する突起が
第3胸椎の棘突起である場合が多いので,それを触察する。
第7胸椎:後正中線上で,左右の肩甲骨の下角を結ぶ線上に存在する突起が
第7胸椎の棘突起である場合が多いので,それを触察する。
第12胸椎:後正中線上で,左右の尺骨の肘頭を結ぶ線上に存在する突起が
第12胸椎の棘突起である場合が多いので,それを触察する。
第2腰椎:後正中線上で,左右の第12肋骨の先端を結ぶ線上に存在する突起が
第2腰椎の棘突起である場合が多いので,それを触察する。
第4腰椎:後正中線上で,左右の腸骨の腸骨稜の上縁を結ぶ線上に存在する突起が
第4腰椎の棘突起である場合が多いので,それを触察する。
② 横突起
頚椎:各頚椎の横突起は,外側方から観察して,頚部の前後長のほぼ中央部に位置する。
よって,伸展した指の指腹でこの部位を外側方から圧迫したとき,最初に触知される隆起を触察する。
各頚椎の横突起の高さは,その頚椎の棘突起の高さとほぼ一致する。
第1頚椎:後方から,側頭骨の乳様突起のすぐ内側方に指を押し込み,最初に触れる骨を触察する。
乳様突起の下端のすぐ内側方の部位を仮の指標にしてもよい。
体幹後壁のくぼみとしては、次のようなものがあります。
聴診三角:僧帽筋、広背筋、大菱形筋で囲まれた小領域で,胸郭に直接到達できる部位である。
肩甲骨下角の内側にあり、肩を前に突き出すと明瞭になる。
腰三角:外腹斜筋の工部はまっすぐに下走し腸骨稜に付く。筋の後縁は自由縁となり,
その下部が腸骨稜と広背筋との間に囲む小さな三角形。
この三角の間隙は,抵抗の弱い部位となって腰ヘルニアを生ずることがある。
腰小窩:腰三角の下内側にあるくぼみ。上後腸骨棘が皮膚と固く結合するため動きにくい部。
脊柱の運動範囲と主力筋および補助筋を示します。
・頚部前方屈曲:0~60°
主力筋:胸鎖乳突筋(副神経、頚神経叢の枝)
補助筋:前・中・後斜角筋(頚神経叢の枝)
・頚部後方伸展:0~50°
主力筋:僧帽筋(副神経、頚神経叢の枝)、半棘筋(脊髄神経後枝)、板状筋(脊髄神経後枝)、脊柱起立筋(脊髄神経後枝)
・体幹前方屈曲:0~45°
主力筋:腹直筋(肋間神経)
補助筋:内・外腹斜筋(肋間神経、腰神経叢の枝)
・体幹回旋:0~40°
主力筋:内・外腹斜筋(肋間神経、腰神経叢の枝)
補助筋:広背筋(胸背神経)、腹直筋(肋間神経)
・体幹後方伸展:0~30°
主力筋:脊柱起立筋(脊髄神経後枝)、腰方形筋(腰神経叢の枝)
以上です。次回からは、脊柱に関わる疾患の勉強をしていきましょう。