25.MMTって
今回は、評価に大切な「徒手筋力検査法」についての勉強です。
あわせて、主な関節の主力筋および協力筋も勉強しましょう。
徒手筋力検査法(MMT:manual muscle test)
MMTは、臨床現場で多く用いられている筋力検査法です。
簡便な反面、データとしては検者の主観的な判断による部分が大きく、
他の検者が行ったデータとの比較には再現性がないなどの弱点があります。
けれども、臨床現場で筋力を大まかに評価するには有効な方法です。
【徒手筋力検査の判定規準】
筋力を6段階に評価します。
筋力5,正常,Normal(N),100%:充分な抵抗にも抗して完全に運動ができる
筋力4, 優, Good(G), 75%:中等度の抵抗に抗して完全に運動ができる
筋力3, 良, Fair(F), 50%:重力に抗して完全に運動ができる(客観的基準)
筋力2, 可, Poor(P), 25%:重力を除けば完全に運動ができる
筋力1,不可, Trace(T), 10%関節の運動としては認められないが,筋の収縮は認
められる
筋力0,ゼロ, Zero(0), 0%:視察・触知によっても筋の収縮が認められない
<注意>
MMTにおいて基準となる「3」は、検者の主観を排除できるた
め重要です。
MMTでは、「+」や「-」を用いることもありますが、主観が強い評価をあいまいにしないため、
実際に使われるのは「3+」「2+」「2-」ぐらいです。
MMTの評価は、運動名でなく筋名で記録しておく方がよいです。
MMTにおいて「完全に運動ができる」は、「被検者が動かせる範囲」ですので、
ROM制限があっても、「動かせる範囲」で完全に運動ができるかを見ればよいのです。
MMT施行時の3つの注意点
① 抵抗
抵抗のかけ方は、MMTの信頼性を大きく左右します。
いつも同じ手(利き手)で行い、抵抗が同じになるように心がけます。
この時、体重を乗せない様に気をつけることが重要です。
② 固定
固定は、運動させる関節に対して「中枢固定・末梢抵抗」が基本です。
③ ポジショニング
ポジショニングは、同じ体位で出来るものはまとめて、被検者に体位変換などの負担を
かけないようにします。
各関節運動の主力筋・協力筋と支配神経
【頚部】
前方屈曲:0°~60°
主力筋
胸鎖乳突筋(副神経、頚神経叢の枝)
協力筋
前斜角筋(頚神経叢の枝)
中斜角筋(頚神経叢の枝)
後斜角筋(頚神経叢の枝)
後方伸展:0°~50°
主力筋
僧帽筋(副神経、頚神経叢の枝)
頭半棘筋(脊髄神経後枝)
頭板状筋(脊髄神経後枝)
頚板状筋(脊髄神経後枝)
脊柱起立筋(脊髄神経後枝)
頚半棘筋(脊髄神経後枝)
【体幹部】
前方屈曲:0°~45°
主力筋
腹直筋(肋間神経)
協力筋
内腹斜筋(肋間神経、腰神経叢の枝)
外腹斜筋(肋間神経、腰神経叢の枝)
回旋(0°~40°)
主力筋
外腹斜筋(肋間神経、腰神経叢の枝)
内腹斜筋(肋間神経、腰神経叢の枝)
協力筋
広背筋(胸背神経)
腹直筋(肋間神経)
後方伸展:0°~30°
主力筋
脊柱起立筋(脊髄神経後枝)
腰方形筋(腰神経叢の枝)
【股関節】
屈曲:0°~90°、0°~125°(膝屈曲時(
主力筋
大腰筋(腰神経叢の枝、大腿神経)
腸骨筋(腰神経叢の枝、大腿神経)
協力筋
大腿直筋(大腿神経)
縫工筋(大腿神経)
恥骨筋(大腿神経)
大腿筋膜張筋(上殿神経)
短内転筋(閉鎖神経)
長内転筋(閉鎖神経)
伸展:0°~15°
主力筋
大殿筋(下殿神経)
半腱様筋(脛骨神経)
半膜様筋(脛骨神経)
大腿二頭筋(短頭:総腓骨神経、長頭:脛骨神経)
外転:0°~45°
主力筋
中殿筋(上殿神経)
協力筋
小殿筋(上殿神経)
大腿筋膜張筋(上殿神経)
大殿筋(下殿神経)
内転:0°~20°
主力筋
恥骨筋(大腿神経)
大内転筋(閉鎖神経)
短内転筋(閉鎖神経)
長内転筋(閉鎖神経)
薄筋(閉鎖神経)
外旋:0°~45°
主力筋
外閉鎖筋(閉鎖神経)
内閉鎖筋(仙骨神経そーの枝)
大腿方形筋(仙骨神経叢の枝)
梨状筋(仙骨神経叢の枝)
双子筋(仙骨神経叢の枝)
大殿筋(下殿神経)
協力筋
縫工筋(大腿神経)
大腿二頭筋(短頭:総腓骨神経、長頭:脛骨神経)
内旋:0°~45°
主力筋
小殿筋(上殿神経)
大腿筋膜張筋(上殿神経)
協力筋
中殿筋(上殿神経)
半腱様筋(脛骨神経)
半膜様筋(脛骨神経)
【膝関節】
屈曲:0°~130°
主力筋
大腿二頭筋(短頭:総腓骨神経、長頭:脛骨神経)
半腱様筋(脛骨神経)
半膜様筋(脛骨神経)
協力筋
膝窩筋(脛骨神経)
縫工筋(大腿神経)
薄筋(閉鎖神経)
腓腹筋(脛骨神経)
伸展:0°
主力筋
大腿四頭筋(大腿神経)
【足関節】
背屈:0°~20°
主力筋
前脛骨筋(深腓骨神経)
底屈:0°~45°
主力筋
下腿三頭筋(脛骨神経)
協力筋
後脛骨筋(脛骨神経)
長腓骨筋(浅腓骨神経)
短腓骨筋(浅腓骨神経)
長母趾屈筋(脛骨神経)
長趾屈筋(脛骨神経)
足底筋(脛骨神経)
【足部】
内反:0°~30°
主力筋
後脛骨筋(脛骨神経)
協力筋
長趾屈筋(脛骨神経)
長母趾屈筋(脛骨神経)
腓腹筋(脛骨神経)
外反:0°~20°
主力筋
長腓骨筋(浅腓骨神経)
短腓骨筋(浅腓骨神経)
協力筋
長趾伸筋(深腓骨神経)
【肩関節】
屈曲:0°~180°
主力筋
三角筋前部線維(腋窩神経)
烏口腕筋(筋皮神経)
協力筋
三角筋中部線維(腋窩神経)
大胸筋(内側および外側胸筋神経)
上腕二頭筋(筋皮神経)
前鋸筋(長胸神経)
僧帽筋(副神経、頚神経叢の枝)
伸展:0°~50°
主力筋
広背筋(胸背神経)
大円筋(肩甲下神経)
三角筋後部線維(腋窩神経)
協力筋
小円筋(腋窩神経)
上腕三頭筋(橈骨神経)
外転:0°~180°
主力筋
三角筋中部線維(腋窩神経)
棘上筋(肩甲上神経)
協力筋
三角筋前部線維(腋窩神経)
三角筋後部線維(腋窩神経)
前鋸筋(長胸神経)
水平位外転(外分回し):0°~135°
主力筋
三角筋後部線維(腋窩神経)
協力筋
棘下筋(肩甲上神経)
小円筋(腋窩神経)
水平位内転(内分回し):0°~30°
主力筋
大胸筋(内側および外側胸筋神経)
協力筋
三角筋前部線維(腋窩神経)
外旋:0°~90°
主力筋
棘下筋(肩甲上神経)
小円筋(腋窩神経)
協力筋
三角筋後部線維(腋窩神経)
内旋:0°~90°
主力筋
肩甲下筋(肩甲下神経)
大胸筋(内側および外側胸筋神経)
広背筋(胸背神経)
大円筋(肩甲下神経)
協力筋
三角筋前部線維(腋窩神経)
【肘関節】
屈曲:0°~145°
主力筋
上腕二頭筋(筋皮神経)
上腕筋(筋皮神経)
腕橈骨筋(橈骨神経)
協力筋
他の前腕屈筋群(正中神経、尺骨神経)
伸展:0°~5°
主力筋
上腕三頭筋(橈骨神経)
協力筋
肘筋(橈骨神経)
前腕の伸筋群(橈骨神経)
【前腕部】
回外:0°~90°
主力筋
上腕二頭筋(筋皮神経)
回外筋(橈骨神経)
協力筋
腕橈骨筋(橈骨神経)
回内:0°~90°
主力筋
円回内筋(正中神経)
方形回内筋(正中神経)
協力筋
橈側手根屈筋(正中神経)
【手関節】
掌屈:0°~90°
主力筋
橈側手根屈筋(正中神経)
尺側手根屈筋(尺骨神経)
協力筋
長掌筋(正中神経)
背屈:0°~70°
主力筋
長橈側手根伸筋(橈骨神経)
短橈側手根伸筋(橈骨神経)
尺側手根伸筋(橈骨神経)
【中手指節関節(四指)】
屈曲:0°~90°
主力筋
虫様筋(正中神経、尺骨神経)
背側骨間筋(尺骨神経)
掌側骨間筋(尺骨神経)
協力筋
短小指屈筋(尺骨神経)
浅指屈筋(正中神経)
深指屈筋(正中神経、尺骨神経)
伸展:0°~45°
主力筋
指伸筋(橈骨神経)
示指伸筋(橈骨神経)
小指伸筋(橈骨神経)
外転
主力筋
背側骨間筋(尺骨神経)
小指外転筋(尺骨神経)
内転
主力筋
掌側骨間筋(尺骨神経)
【中手指節関節(母指)】
屈曲:0°~60°
主力筋
短母指屈筋(正中神経)
伸展:0°~10°
主力筋
短母指伸筋(橈骨神経)
外転:0~60°
主力筋
長母指外転筋(橈骨神経)
短母指外転筋(正中神経)
協力筋
長掌筋(正中神経)
内転:0°
主力筋
母指内転筋(尺骨神経)
【指節間関節(四指)】
屈曲:PIPー0°~100°、DIP-0°~80°
主力筋
浅指屈筋(PIP)(正中神経)
深指屈筋(DIP)(正中神経、尺骨神経)
【指節間関節(母指)】
屈曲:0°~80°
主力筋
長母指屈筋(正中神経)
伸展:0°~10°
主力筋
長母指伸筋(橈骨神経)